2015年10月17日土曜日

自民党稲田政調会長「TPPは”日本壊国”宣言だ」 『WiLL』2012.1

まるで「アイドル」にでもなったような気でいるのかもしれない。安倍首相が、TPPで、「大成功を収めた」と自画自賛している。

だが、「子飼いの」稲田朋美政調会長は、かって(野党時代)、このTPPへの「交渉参加」を激しく攻撃していた。

この記事は、『WiLL』2012年1月号に掲載された「対談」においての、稲田氏の発言を採録したものである。例によって、WiLLの記事を書き写した。



稲田氏は、TPPについて、「TPPは”日本壊国”宣言だ」と口を極めて、批判していたのである。 

TPPは、自民党内にも、反対者は少なからず、いる。それどころか、民主党政権の時には、自民党はこぞって反対を表明していた。

「LITERA(リテラ)」というサイトが、これを安倍首相とともに取りあげ、10月14日に記事にした。


◆ 安倍首相の変節=「聖域なき関税撤廃が前提ではない」     

大筋合意に達した環太平洋経済連携協定(TPP)への怒りの声が高まっている。とくに多くの品目で関税が撤廃されるため、影響が大きい農業関係者は切実だ。全国農業協同組合中央会(JA全中)の奥野長衛会長は「農家から怒りの声が上がっている」として森山裕農林水産相へ対応を求めた。
 全国の畜産・酪農団体でつくる「日本の畜産ネットワーク」は、合意内容は全畜種の経営に「非常に深刻な影響を与える」とし、日本養豚協会は「輸入肉が増えて国産相場が暴落するおそれがある。このままでは(養豚業に)夢がなくなる」。全国肉牛事業協同組合は「現場に報告する言葉がない」と嘆いている。・・・
2012年12月の総選挙では、「聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対」との公約を打ち出し、「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。日本を耕す!! 自民党」というポスターを大票田の農村にバラまいたが、政権に返り咲くと、4カ月の3月には安倍首相は「聖域なき関税撤廃が前提ではない」と交渉参加の姿勢に一転するなど大ウソをつきまくってきた。≫(「LITERA」)

◆ 「WiLL」の2012年の、「新年超特大号」

私も、このことに関しては、このブログで取り上げた。

TPP 安倍首相は「大きな前進」。稲田氏は「日本壊国」宣言だ

LITERAのこの記事も、私の記事でも、稲田氏の発言のごく一部だけを取りあげたに過ぎない。

実は、この「対談」で、稲田氏は、重要な点や、今の自民党にとってこそ、あてはまる点など、詳しく言及している。そこで、もっと詳しく「対談での発言」を観ていくことにしたい。

対談が掲載されたのは、「WiLL」という雑誌の2012年の、「新年超特大号」。12ページにわたって、対談の内容が掲載された。

対談の相手は、田中康夫氏。

この記事での稲田氏の発言に限り、これから、観ていきたい。
とても、「興味のあること」が書かれていて、たいへん面白い。

全部を「抜書き」していくと、相当な量になると思われるので、何回かに分けて、投稿していきたい。(以下は、対談の内容の「抜書き」。田中氏の発言も、なかなかおもしろいのであるが、ここでは、省く。)

         ★      ★       ★        

稲田:推進派はなぜか楽観的で「バスに乗り遅れるな」と言うけれど、行き先を分かっているのか疑問です。

どこに連れて行かれるか分からない、しかも途中下車も出来ないバスに国民を乗せるわけにはいきません。バスは乗り遅れるかじゃなくて、行き先が重要でしょう?

「田中」発言 略
 
稲田:農業だけの問題じゃない、日本の文明、国柄らの問題なんです。これにどうして保守派が強硬に反対しなのかが、とっても不思議

「田中」発言 (社民党の阿部知子氏と一緒に写真に納まった時のことを聴かれ)

稲田:不思議な光景でしたよね(笑)。

「田中」発言 略

稲田:田中先生が代表となって、「衆議院の超党派で、交渉参加を表明すべきでないとする国会決議を目指しましょう」と呼びかけたのが、11月4日の金曜日でした。

「田中」発言 略

稲田:こんなに重要なことを、たった1回の集中審議だけで十分な国会議論もなく決めてしまうなんて、どう考えてもおかしい。

しかし、ご存知のように、民主党はあの「詐欺選挙」で議席を3百も取っています。条約の批准に関しては衆院の優越がありますから、野田総理のやろうとしていることがどんなにばかげていたって、採決になったら通ってしまうはずなのです。

民主党は最初、百を超える賛同者がいたのですが、圧力で少し消えて(笑)、96名。民主党の議会運営員会の理事も2名、委員も5名署名しています。

本来ならどんな条約でも批准されはずの衆議院で、過半数にもおよぶ反対署名が集まったことがすごいと思います。

「田中」発言 略

稲田:信じられないのは、民主党内の反対派だったはずの議員ですよ。

「田中」発言 略

稲田:「離党も辞さない」といっていたのに。一体、どうなっているのか。あの「ほっとした」という発言は自分たちが離党しなくて済んで「ほっとした」って意味でしょうね。
  
「田中」発言 略 

稲田:卑怯の最たるものが野田総理ですからね。国論を二分する大問題にもかかわらず、総理はまったく国会での議論をしなかった

「表明」を1日伸ばしたので、10日に集中審議をしても「交渉参加か否か」がはっきりしないから、単なる公聴会のようになってしみました。

とんでもない国会軽視、国民軽視ですよ。本当に許せません。

「田中」発言 略

稲田:どうして国民の生活に関わる重要なことを全部、海外で言うんですかね。しかも、サービスよろしく。

ええかっこしいで、相手に気に入られるようことを言いたくなってしまうのか。
鳩山さんも管さんも野田さんも、みんなそうですね。

目の前の人に喜ばれることを言ってしまって結局、できない。

「田中」発言 略

稲田:もし仮に、TPPが野田さんにとって昔からの「自分の信念だった」というなら、もっと早い時期から論議を重ねて、サンドバック状態になっても意思を貫くべきだったでしょう。

ところが、議院運営委員会では反対署名を行った委員を差し替えて国会決議案を本会議に上程できないようにしたり、「交渉参加に向けた関係国との協議」なんて卑怯な言い方をする。

こういう人が日本のトップだなんて、情けないにもほどがある。

            ★      ★       ★        


◆ 稲田氏自身も「大ウソをつきまくってきた」

「突っ込みどころ、満載」の記事ですが、ゆっくりと観ていきたいと思う。
今日はここまでとしたい。

さて、この稲田氏の発言。
読まれた感想は、どうだったでしょうか。

「野田総理」というところを、「安倍総理」と読み替えれば、稲田氏の発言は、そっくり、そのまま安倍首相にも当てはまる。私の感想である。

とくに傑作なのは「どうして国民の生活に関わる重要なことを全部、海外で言うんですかね。しかも、サービスよろしく。」という発言だ。

これこそ、安倍首相の「得意技」である。
だが、不思議なことに、安倍首相のこの姿勢については、自民党からも、公明党からも、稲田氏当人からも、何の疑問の声も、これまでに上がってはこなかった。

それどころか、安倍首相は、行く先々で、気前よく「国民の血税」をばら撒いている。これについても、何の異議を挟む声は、与党内から聞こえてはこない。

もちろん、稲田氏も「沈黙」したままである。

野党時代には、「信じられないのは、民主党内の反対派だったはずの議員ですよ。」と言っておきながら、自身の事については、「われ関せず」ということのようだ。


いくらなんでも、自分を引き上げてくれた首相に向かって、「卑怯の最たるものが安倍総理です」とは言えないのは、無理のないところであろうが。


「とんでもない国会軽視、国民軽視ですよ。本当に許せません。」という発言も、安倍首相への批判としては、的を射たものである。

もちろん、これも、稲田氏は、安倍首相に向かっては言える言葉ではないだろう。

その意味では、稲田氏自身も「大ウソをつきまくってきた」と言える。


(2015年10月17日)