2015年10月18日日曜日

TPP「ISD条項は主権侵害、民主主義の否定だ」 自民、稲田政調会長

TPPに関する稲田朋美氏(自民党政調会長)の発言の、第二弾。
今回の主題は、ISD条項です。
TPPについて、「ISD条項は、主権侵害、民主主義の否定」であって、「日本をつぶす」。こう述べていた。ISD条項の持つ危険性についての、稲田氏の発言を検証していきます。

前回に引き続き、稲田氏の発言のみを、書き取っていきます。
初回の内容は、ココにありますから、参考にしてください。

自民党稲田政調会長「TPPは”日本壊国”宣言だ」 『WiLL』2012.1

では、続きをご覧ください。


◆  「日本はつぶれてしまいます」


稲田:少なくとも、小泉さんには覚悟があった。野田総理に覚悟なんてありませんよ!!!大体、ISD条項も知らなかったじゃありませんか。

これは企業や投資家が、投資先の相手国に規制や制度によって損害を被ったとき、国際救済裁判所へ訴訟を起こせるというものです。

近年、日本は外資に狙われている森林や水資地の土地取得、空港の外資規制などを法整備して行こうという方向で進んでいたはずです。

ところが、TPPでこれらの規制が「投資家に不利」と判断されれば訴えられるということです。

これは、日本の国益に合致する規制を設けるための立法権も司法権も侵害されることになり、主権侵害であり、民主主義の否定になってしまいます。

田中:発言略

稲田:国内法がずたずたにされるというのに、外務省に問いただすと「発展途上国に日本企業が出ていくときに、不利な規制があれば阻止できる」と答えるんです。

つまり、ISD条項は日本企業を守るためにあると。

田中:発言略

稲田:自分だってジャイアンに巻き上げられるのに、そこは言わない。今だって、すでにデリバディブ取引などで日本の中小企業は多大な損害を負っています。

アメリカ型の「なんでもあり」の市場原理主義は、人々を幸福にも豊かにもしないことはウォール街のデモを見ればわかります。

そういうカジノ資本主義を規制して、まじめにものづくりをしている中小企業を守ろうといっていたときにTPPをやるなんて、矛盾もいいところ。

TPPは日本をアメリカの価値観で染めるということですから。そんなことをしているうちに、日本はつぶれてしまいますよ。(「WiLL 2012年 新年超特大号」 96~97貢)


◆ 本当に情けないのは、どっちなのか

いきなり、「ジャイアン」が出てきて、面喰っておられる向きもあろうから、「田中康夫」氏の発言を、ここで補足しておきたい。

稲田氏の発言の前に、田中氏は「日教組をはじめとする民主党の”人権派”は、弱い者イジメだと怒らなくちゃ。

ドラえもんで言えば、アメリカというジャイアンがいて、”その友達です”って米搗きバッタしてるスネ夫が日本。そして、のび太である途上国を、腰ぎんちゃくのスネ夫がいじめるのを、よしとするような話。」と説明している。

最後の「TPPは日本をアメリカの価値観で染めるということ」という発言には、田中氏は「グローバルスタンダードですらない」、「”アメリカンスタンダード”に合わせろという話をそのまま飲みこんでいる」と答えている。

「そんなことをしているうちに、日本はつぶれてしまいますよ」という認識を持ちながら、安倍首相に「何も言えない」稲田氏。

本当に情けないのは、どっちなのか。そう問いたい。


◆ 全力で、安倍首相に「諫言」すべきだった

「よくまあ―言ってくれたものである」と、感心する。

今年の10月2日に、自民党の稲田朋美政調会長は、「TPPが成立すれば対抗する政策は党が責任を持ってまとめるが、国益に合致しない交渉を成立させる必要はない」と強調。「米をはじめとした重要品目をきちんと守り、日本の農業を守る形での交渉を進めてもらいたい」と政府に求めていた。(「産経」)

この稲田氏の論理からすれば、TPPが合意に至ったということは「国益に合致」した、ということであり、そうであるなら、「対抗する政策は党が責任を持ってまとめる」必要がない。

そもそも、稲田氏は、自民党の政調会長という要職にある。米国での講演でも、冒頭において、「自民党政調会長の稲田朋美です。自民党の政策責任者をしています」と述べている。

自民党は、安倍政権を支える与党であり、いわば、安倍政権とは一体の関係にある。その稲田氏は、かっては、TPPについて、今ここに書き出したような認識を示していた。

ここでの発言の要点は、要するに、TPPは「日本の国益に合致する規制を設けるための立法権も司法権も侵害されることになり、主権侵害であり、民主主義の否定」につながるから、TPP参加交渉には反対だ、ということにある。

そうであるなら、稲田氏は日本の国益を守るためにも、全力で、安倍政権のTPP交渉参加を阻止意べき立場にあった。

そうあるのに、まったく、無関係であるかのような「感想」を述べている。

稲田政調会長に覚悟があれば、ISD条項の危険性をよく「知っている」のであれば、日本を守るために、全力で、安倍首相に「諫言」すべきであった。

それをしなかったということは、稲田政調会長にこそ、「覚悟」がなかった、ということになる。


(2015年10月18日)