2014年8月11日月曜日

LS:オバマ大統領の「イラク空爆の決定」についての社説比較(1)読売新聞は、中立公正。

日本に、大きな被害をもたらすと心配された台風が、去って行った。
今日は、台風一過。夏空が戻り、空は晴れ渡っている。

大きな決断をした後の、__休暇に入り、ゴルフを楽しむ__オバマ大統領の心も、この空のように晴れ渡っているのであろうか。


 社説を比較してみることにした

米軍が__オバマ大統領が__イラクへの攻撃を再開した。
重大な決断である。

また、今回は、日本にとっても、無関心では、おれない事態だ。

それで、大手新聞社の社説を比較検討することにした。
初めに、それらの社説の大まかな見解について、示す。

朝日新聞は、まだ、社説を出していない。
東京新聞も、同様に、社説を出していない。

産経新聞は、全面的に賛意を表明した。
毎日新聞は、産経寄り__イラクへの攻撃を肯定__の社説を出した。

地方紙ではあるが、北海道新聞が、最も批判的な社説を載せた。

その中で、読売新聞が、最も、中立的な__要領よくまとめ上げた__社説を載せた。(私には、以外であるが。)

それが、読売の社説を、最初に取り上げる理由である。

 YOMIURI online が載せた社説から__

『米軍がイラクで、イスラム過激派組織に対する空爆に踏み切った。
 2011年に米軍がイラクから全面撤収して以来、初の軍事介入だ。

 イラクからの米軍撤収を大きな成果に掲げてきたオバマ政権にとって、再度の軍事介入はイラク政策の転換を意味する。

 米軍が空爆したのは、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」の拠点だ。米空母搭載の戦闘攻撃機や無人攻撃機が、迫撃砲陣地などを繰り返し爆撃した。

 イラクでは、シリア内戦に乗じて勢力を拡大したイスラム国が、他の宗派や民族を攻撃し、都市や油田を次々に占拠している。国家崩壊の危機である。

 劣勢のイラク政府をテコ入れするため、米国は軍事顧問などを派遣したが、その後も戦況は悪くなるばかりだ。過激派の攻勢に歯止めをかける軍事行動に乗り出したことは理解できる。

 オバマ大統領は目的について、外交官や軍事顧問などイラク在住の米国人の保護を挙げた。

 さらに、過激派の迫害で山岳地帯に逃げ込んだ多数の住民が、食料も水もなく死に直面していると指摘し、「大虐殺に相当する。米国は見て見ぬふりはできない」と、人道的な側面を強調した。

 イラクの要請に基づく今回の空爆に対し、英仏は明確な支持を表明した。岸田外相も、「テロとの戦いの一環」だとして、一定の理解を示した。

 米国は11月に中間選挙を控えており、空爆は政治的にも難しい決断だったと言えよう。

 イラク情勢の悪化について野党共和党内には、オバマ政権の「弱腰」が原因とする批判が多い。

 一方、国民の多くは米軍の海外派兵に反対だ。オバマ氏がを強く地上部隊の派遣否定した背景には世論への配慮もあるのだろう。

 懸念されるのは、空爆の効果が不透明で、「出口戦略」が描けていないことだ。いたずらに空爆が長引けば、イラク国民の反米感情が高まる恐れもある。

 長期的なイラク安定化のためには、イラク国民の融和と、イラク軍の強化による治安の改善を図ることが欠かせない。

 イスラム教のシーア派とスンニ派、クルド人などの各勢力が参画する挙国一致内閣を早期に樹立することが肝要だ。

 米国は、シーア派大国のイランや、スンニ派に影響力を持つサウジアラビアなど周辺国と連携し、イラク安定に向けて粘り強く外交努力を続けるべきだ。』

 (YOMIURI online 8/10)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20140809-OYT1T50106.html

◆ 実に要領よくまとめられている

オバマ大統領が、攻撃の決断に至った経緯。①
攻撃の実態。②
米軍が攻撃する前のイラクの現状。③

攻撃の理由。④
他国の反応。⑤
オバマ大統領の心境。⑥

懸念されること。⑦
イラクの安定に必要な事。⑧
米国の、本来果たすべき役割について。⑨

これらの事について、実に要領よくまとめられている。
読売新聞にしては、珍しく、__これは私の感想です__中立的な社説である。

 「イスラム国」の人々の精神までは、打ち倒すことは、出来ない

難点は、ここには、「現象面ばかり」が取り上げられており、本質的な事については、何も語られてはいない。

それは、宗教のことである。
この面からの考察をしないと、物事の本質が見えてこない。

イラクの内戦が、__「国家崩壊の危機」と記事が書く__何故起きているのかを、理解することは出来ない。

イスラム教スンニ派の”過激派組織”であると言われる、「イスラム国」が、何故、形成されたのかを理解することが出来ない。

それは、宗教が根本にある。
人々の宗教心が、引き起こしている事なのである。

しかも、その宗教心は、「キリスト教」対「イスラム教」というような対立ではない。いわば、宗派の対立である。

それを理解するには、「イスラム教とは、どんな宗教であるか」が、理解できていないと無理だ。
そして、イスラム教を理解するとともに、現代社会に生きる人々のジレンマを、__「イスラム教」が持つ苦悩__理解できないと、ダメである。

 米軍は、イラクで泥沼に足をふみ入れ、抜き差しならない結果に終わる

彼らの心情を理解できない限りは、この介入は、__前回と同様に、やがては__失敗に終わる事であろう。

いくら、米軍の圧倒的な戦力を持ってしても、「イスラム国」の人々の精神までは、打ち倒すことは、出来ない。それをやりたければ、皆殺しにする以外に方法がない。

そこまでやる覚悟が、米軍にあるか。
有りはしまい。
そうであるなら、介入をすべきではなかった。

だが、それも今となっては、もう遅い。
米軍は、再び、イラクで泥沼__砂漠地帯であるから、アリ地獄といった方が正解か__に足をふみ入れ、抜き差しならない結果に終わるだろう。

前回と同じことだ。

* 次回は、北海道新聞の社説を見てみることにしたい。

(2014/811)