2014年8月30日土曜日

「イスラエルとシリアの停戦を監視する国連兵力引き離し監視軍」の要員を、拉致か。

国連平和維持活動(PKO)が、危険な事が、これで証明された。


1) CNN の記事より__。

国連は、国連平和維持活動(PKO)の要因が、ゴラン高原で武装勢力に拉致されたと発表した。

イスラエルとシリアの停戦を監視する国連兵力引き離し監視軍」(UNDOF)の要員43人である。



 国連は28日、イスラエルとシリアの停戦を監視する国連兵力引き離し監視軍(UNDOF)の要員43人が両国の境界に近いゴラン高原で武装勢力に拉致されたと発表した。

現場はクネイトラ検問所の近く。同検問所は27日、シリアの反体制派武装勢力によって占拠されていた。

イスラエル軍関係者によれば、拉致に関与したのは国際テロ組織アルカイダ系武装勢力の「ヌスラ戦線」。ヌスラ戦線はシリアの反体制派の1つで、27日の検問所占拠作戦にも加わった。

国連は「拘束された国連平和維持活動(PKO)要員を解放させ、(UNDOFが)活動地域全体で完全に自由に動ける状況を取り戻すためにあらゆる努力をしている」とプレスリリースで明らかにした。

国連によれば拘束された43人は全員フィジー軍の兵士。また、フィリピン軍所属の81人のPKO要員が近くの村からの移動を制限されているという。

ヌスラ戦線は、シリア北部や東部の広い範囲を勢力下に収める「イスラム国(IS)」と同じイスラム教スンニ派の過激派組織。両勢力はアサド政権と戦う一方で互いを敵として戦ってもきた。』(CNN  8/29)

http://www.cnn.co.jp/world/35053043.html


2) ゴラン高原問題とは


ゴラン高原問題とは、wikipediaの解説によれば、以下のようなものである。
なお、ここに出てくる、「クネセト」とは、イスラエルの立法府の事をいう。

『イスラエル国防軍1967年から1981年まで占領して軍政下に置き、後にクネセトによってゴラン高原法に基づく民政下に置かれた。イスラエルを除く当事国、および国連のどちらもこれを認めていない。

国連安全保障理事会が決議497「イスラエルの併合は国際法に対して無効である」旨を採択し、同地がイスラエルによって不当に併合されたシリア領であるという見解が固定化した。しかし、イスラエル政府は「併合」であると認めていない。・・・・


シリアとイスラエルは現在もゴラン高原の領有権を争っているが、第四次中東戦争停戦後の1974年以来、武力行使を行っていない。ゴラン高原の戦略的および水源地としての大きな価値は、両国の交渉が不確かであることを意味している。・・・」(wikipediaより)

この説明を素直に読めば、イスラエルがシリアに軍事侵攻して、シリアの領土を占領した、ということだ。

だから、非は、イスラエルにある。
ここを、出発点とする。

3) 国連の本質は、米国を中心とした、軍事連合である

オバマ大統領は、28日に、ホワイトハウスで記者会見をし、シリア空爆を念頭に、中東諸国、欧州などに対し「有志連合」の構築を行う考えを表明した。

シリア包囲網を作る事が目的で在ろう。
この事をシリア側が、素直に認めるとは、到底思えない。

だから、今回のPKO要因の拘束という事態が発生した、と考えられる。
国連は、名前こそ、国連であるが、その本質は、米国を中心とした、軍事同盟連合体である。

国連の中心は、国連安全保障理事会にある。
その付属機関が、PKFやUNDOFだ。

もっとも、国連安全保障理事会を支配しているのは、常任理事国の米、英、仏、露、中国である。この5か国が、拒否権を持つ。

これらの国々は、__第二次世界大戦の「連合国」__いわゆる戦勝国である。だから、国連は、もともとは、これらの連合国の合議機関であった。

4) 正義は、ひとつではない。この事が、問題を複雑にする

社会における正義は、ひとつではない。
人において、組織において、宗教において、信条などにおいて、それぞれの、正義が存在する。

この事は、国際社会にあっても、同様である。
そうだとすると、正義が、どちらにあるかを決めるのは、自分たち自身という事になる。

それを国連が、「正義面」をして、内戦状態にある国や、紛争地域に出かけて行って、介入することは、関係国にとっては、迷惑な事であろう。

反発があるのは当然、予想されることだ。
まして、「国連の正義」を押し付けられたとあっては、尚の事である。

そして、その「国連の正義」が、米国の後押しで行われる現状においては、米国への反発が、国連への反発となって表れることは、避けられないであろう。


ガザでの軍事行動、シリアの内戦、と複雑な状況にある。
その中で、オバマ大統領は、他国を頼んで、シリアへの空爆に踏みる決断を下そうとしている。

それを牽制するための行動を、シリアの武装組織側が取ろうとするのは、当然の成り行きであろう。

(2014/8/30)