2014年8月6日水曜日

LS:安倍政権「吉田調書」不開示の決定。朝日新聞の”吉田調書”すっぱ抜きと、「従軍慰安婦」の”謝罪”記事。

これが、安倍首相のいう「丁寧」な説明なのか。
これでも、原発を再稼働することを納得せよ、というのか。


1) 47ニュース が伝えた記事より__

安倍政権が、東電事故の際の、いわゆる「吉田調書」を、不開示にする決定をした。

『東京電力福島第1原発事故の被災者らが、政府の事故調査・検証委員会が同原発の吉田昌郎元所長(故人)に事故当時の状況を聞いた「聴取結果書」を開示するよう求めた情報公開請求に対し、政府は5日までに、不開示の決定をした。

 被災者らは8月中にも、決定を取り消し開示するよう求めて東京地裁に提訴する方針。


 吉田氏は生前、第三者への公表を望まないとする上申書を提出していた。

被災者の代理人弁護団によると、政府は「ヒアリングの前提に反し、事故調査への信頼が損なわれる」などと不開示の理由を説明したという。』(47ニュース
8/5)
http://www.47news.jp/CN/201408/CN2014080501001447.html

2) 政府が、公開を拒む理由にはならない。

たとえ、吉田氏の「第三者への公表を望まないとする上申書」が、あったとしても、政府が公開を拒む理由にはならない。

この記事が言う、「ヒアリングの前提」とは、公開しない、という前提だろう。

だが、国会の事故調が出した「報告書」には、吉田所長からの聞き取りによると思われる記述が見られる。

「報告書」は、次の様に述べる。
 
「地震が起こったときは、福島第一原発の事務棟にある所長室にいたが、直ちに免震重要棟に移動して、以後、現場の陣頭指揮を執り続けた。東電本店の小森常務やオフサイトセンターの武藤副社長とは、テレビ会議システムを通じて意思疎通が図られていた」(注①)


その後の経過や、__吉田所長から聞き取った「証言」にもとずくと思われる__事故への対応、が記されている。

だが、果たして、国会の事故調の「報告書」に記載されている内容が、「吉田調書」の内容と同じものであるという確証は、ない。それは、この吉田調書が公開されることによって、はじめて確かなものとなる。

3) それなりに、別の表現に置き換えればよい

私が思うに、吉田氏が、「吉田調書」の公開を望まないとする上申書を出したのは、そこには、余りに、生々しい現実と、本店に対する氏の怒りの言葉が述べたてられているからではないか。そう感じる。

「公開を憚れれる」ような言葉使いも、述べられているのではないか。激情に駆られて、普段には使わないような言葉が記されているのではないか。それで、公開してほしくない、と思われたのではないか。

もし、そうであるなら、その箇所には、それなりに、別の表現に置き換えればよい。もちろん、その旨を、注意書きをして、よく分るようにしておくことが必要だ。

4) 日本の、世界の国々においても、十分に教訓となる貴重な証言

「事故調査への信頼」という事については、問題外だ。こんな事が二度も三度もあったのでは、それこそ大変だ。そんなことが起きれば、日本列島は沈没する。

「吉田調書」は、__”吉田氏への聴取時間は28時間あまりで、あの瞬間、どう行動し、何を考えていたかまで聴き取った。畑村洋太郎・政府事故調委員長は、ほかに吉田氏の公式の調書がないことから「貴重な歴史的資料」と呼んだ__、と言われているものだ

そうであれば、尚の事、公開される価値は大きい。

二度と、あのような事故が起こされてはならないことは、当然のことであるが、__そうでなくとも、規模の程度は違っても__予期せぬ事故は、いつでも、どこでも、起きる可能性がある。

福島の東電の事故は、文字通り、極限においての事故だ。その意味では、日本の、世界の国ぐにおいても、十分に教訓となる貴重な証言である。

このような貴重な証言を、秘匿し、公開しないことは、__大げさに言えば__人類の貴重な財産を奪い取ることだ、と思う。

5) 朝日新聞が掲載している、”吉田調書”を検証するためにも

朝日新聞が、今年の5月20日から、「東日本大震災発生時の東京電力福島第一原子力発電所所長・吉田昌郎氏の肉声を記録した政府事故調の非公開資料を報告します」として、連載記事を組んだ。


この、朝日新聞が掲載している、__朝日新聞が、そうだと言っている__”吉田調書”の信憑性を検証するためにも、是非公開すべきである。

この朝日新聞が掲載している、”吉田調書”は、__政府が公開を拒んでいることなどから__「捏造」である、という論調も、かなり存在する。

先日来、朝日新聞は、「従軍慰安婦」の記事について、次にような記事を載せた。

『5日に発売された光文社の写真誌「FLASH」8月19日・26日号に掲載された「『従軍慰安婦捏造(ねつぞう)』朝日新聞記者 大学教授転身がパー」の見出しの記事について、朝日新聞社は5日、朝日新聞の報道を根拠なく「捏造」と決めつけ、名誉と信用を著しく傷つけたとして、FLASH編集長に抗議するとともに、謝罪と訂正の記事掲載を求める文書を送った。

朝日新聞社広報部は「5日付朝日新聞の特集『慰安婦問題を考える:上』で報じた通り、慰安婦問題を報じた記事に朝日新聞記者による捏造は一切ありません」・・・』(注②)

この「従軍慰安婦」の記事を載せたことで、朝日新聞への信頼が崩れようとしている。それは、朝日新聞が掲載した”吉田調書”への不信感となって表れる事であろう。

だから、そのためにも、安倍政権による「吉田調書」の公開が待たれるのである。

5) 安倍政権も、当初は、公開に、前向きであった

また、政府も、これには最初は、前向きであったはずだ。

『菅義偉官房長官は22日午前の記者会見で、東京電力福島第一原発で事故対応の責任者だった吉田昌郎元所長(故人)が政府事故調査・検証委員会に答えた「聴取結果書」(吉田調書)について、開示しない方針を示しながらも、「もしご遺族から違う形の申し出があれば当然(開示を)考えるべきだ」・・・』

このような記事を、朝日新聞が報じたことがある。(注③)

我が国における未曽有の経験である、原子力事故という経験。

「究極の人間行動の記録」ともいえる「吉田調書」を公開は、国民の信頼を得るための、__再稼働をしても安全である、という事を証明する__最低限の必要条件である。

(注①)

http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3856371/naiic.go.jp/report/