東洋経済Onlineが、「集団的自衛権、黒幕の米国が考えている事」というタイトルの記事を掲載している。
重要な指摘を含むものであると思うので、検討してみる。
1) 高橋浩祐氏の基本認識とは
2) 高橋氏の記事の要約
従って、今、軍事同盟を必要としているのは、米国の方である。この事は、このブログでも、何度指摘したように、アーミテージ報告書にもきさいされていることである。
Long Storyである。
要約する。
① 米国の要請の下、日本は、専守防衛の域を超え、1990年代以降、自衛隊の海外派遣に踏み切った。
② 1990年代以降は、日本が軍事的な役割を拡大することで日米安保体制が安定するという歴史的な流れが続いている。
③ 米国は在日米軍を維持することで、米国の陸軍も海軍も空軍も海兵隊も、時間や金、人員輸送を大幅に節約できる。
平時も、アジア・太平洋でのアメリカの覇権を維持する軍事プレゼンスを保つことが出来ている。
④ (米国は、わずかな負担で日本が得をしている、と言っているが)日本は米国に対して既に戦略的に重要で広大な基地を貸している。
⑤ 外国の軍隊と基地を自国内に受け入れた場合、自国の国家主権の制限や侵害の事態を生み、必ずトラブルの元になる。
⑥ 今は、日本側が言うべきことを言い、安保負担をめぐる国内世論と米国との認識ギャップを縮める努力をすることが急務である。
3) 高橋氏の記事を、詳しく読んでみる。
①について。
『冷戦の終結に伴い、イラクなどの「ならず者国家」が出没した。米国の要請の下、日本も専守防衛の域を事実上超え、1990年代以降、自衛隊の海外派遣に踏み切った。
湾岸戦争終結後の海上自衛隊掃海部隊のペルシャ湾派遣(1991年)を皮切りに、イラクへの自衛隊の派遣(2003~2009年)、インド洋での給油活動(2001~2010年)につながっていった』(同上)
②について。
集団的自衛権については、その「集団的自衛権の必要性に触れた有識者懇談会報告はすでに5回も出ている」として、次のように書く。
重要な指摘を含むものであると思うので、検討してみる。
1) 高橋浩祐氏の基本認識とは
高橋浩祐氏は、ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー東京特派員である。wikipediaによると、ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーは、「軍事と軍需産業情報に関する週刊誌」である。
そこの特派員である。と言うことは、プロ中のプロだ。
以下、その見解を聞いてみよう。
高橋氏は、冒頭で、次のように言う。
『安倍政権はお釈迦様の手のひらの上にいる孫悟空のようなもの。黒幕は、あくまで米国だ。内実は、日本に対し、米軍支援拡大など軍事的貢献を求める米国からの長年の強い圧力がここにきて強まっていることが背景にある。
・・・
米国一極主義ではなく、同盟国や友好国を結集して、国際協調主義の下で「集団行動」をとっていくことをオバマ政権は表明している。そして、そのために、北大西洋条約機構(NATO)や日本など世界中の同盟国に安全保障面でのさらなる負担を求めている。
つまり、米国はもう単独では国際秩序を維持できないということを白旗を上げて認めている(東洋経済Online 7/1)
http://toyokeizai.net/articles/-/41323?page=22) 高橋氏の記事の要約
従って、今、軍事同盟を必要としているのは、米国の方である。この事は、このブログでも、何度指摘したように、アーミテージ報告書にもきさいされていることである。
Long Storyである。
要約する。
① 米国の要請の下、日本は、専守防衛の域を超え、1990年代以降、自衛隊の海外派遣に踏み切った。
② 1990年代以降は、日本が軍事的な役割を拡大することで日米安保体制が安定するという歴史的な流れが続いている。
③ 米国は在日米軍を維持することで、米国の陸軍も海軍も空軍も海兵隊も、時間や金、人員輸送を大幅に節約できる。
平時も、アジア・太平洋でのアメリカの覇権を維持する軍事プレゼンスを保つことが出来ている。
④ (米国は、わずかな負担で日本が得をしている、と言っているが)日本は米国に対して既に戦略的に重要で広大な基地を貸している。
⑤ 外国の軍隊と基地を自国内に受け入れた場合、自国の国家主権の制限や侵害の事態を生み、必ずトラブルの元になる。
⑥ 今は、日本側が言うべきことを言い、安保負担をめぐる国内世論と米国との認識ギャップを縮める努力をすることが急務である。
3) 高橋氏の記事を、詳しく読んでみる。
①について。
『冷戦の終結に伴い、イラクなどの「ならず者国家」が出没した。米国の要請の下、日本も専守防衛の域を事実上超え、1990年代以降、自衛隊の海外派遣に踏み切った。
湾岸戦争終結後の海上自衛隊掃海部隊のペルシャ湾派遣(1991年)を皮切りに、イラクへの自衛隊の派遣(2003~2009年)、インド洋での給油活動(2001~2010年)につながっていった』(同上)
②について。
集団的自衛権については、その「集団的自衛権の必要性に触れた有識者懇談会報告はすでに5回も出ている」として、次のように書く。
『1990年代以降は、日本が軍事的な役割を拡大することで日米安保体制が安定するという歴史的な流れが続いている。集団的自衛権の論議もこの流れに沿っている。
米国の強い圧力の下、実は、集団的自衛権の必要性に触れた有識者懇談会報告はすでに5回も出ている。
最初が小泉内閣時代の2004年の「安保防衛懇」報告、次に2008年の第一次安倍政権下での「安保法制懇」報告、3度目が麻生政権時代の「安保防衛懇」報告、4度目が鳩山由紀夫-菅直人政権下の「新安保懇」報告。そして、直近の第二次安倍政権下での「新安保法制懇」報告(がある)』(同上)
2004年といえば、ブッシュ大統領がイラク戦戦争の「大規模戦闘宣言」が出た後だ。ところが、イラクの治安は安定せず、悪化するばかりの頃である。
米国にとって、この時こそ、日本に同盟国として「血を流して」欲しいと思っていた時期であろう。
③について。
『米国は在日米軍をきっちり維持することによって、中東と東アジアを結ぶ海上交通路(シーレーン)での有事の際、米国の陸軍も海軍も空軍も海兵隊も、時間や金、人員輸送を大幅に節約できる。
そして、平時の際でも、アジア・太平洋でのアメリカの覇権を維持する軍事プレゼンスを保つことができる。・・・
東アジア・太平洋地域において、どこにでも航空機と海上輸送力を使って迅速に派遣できることにあり、沖縄の戦略的位置は、対応所要時間を減らし、米本土からの増援軍と、補給物資の輸送に必要な限定された戦略航空・海上輸送能力の規模が小さくすむようにさせている』(同上)
④について。
『日本は米国に対して既に戦略的に重要で広大な基地を貸している。これも片務的なものだ。もし本当に双務的な安保体制にするならば、嘉手納の見返りとしてグアムのアンダーセン空軍基地、横須賀
や佐世保の見返りとしてハワイのパールハーバーやサンディエゴを貸してくれ、と日本は主張すべきだ。・・・
米国から見た場合、日本は太平洋を越えた反対側にある。米国の西海岸から西太平洋の日本までは、地球の地表の50%以上を占め、16個のタイムゾーン(時間帯)をまたぐ。航空機でも片道十数時間、船では平均航行速度15ノット(約28キロ/時)で約2週間かかる。
この広大な太平洋を渡る距離、船で片道2週間という時間を、米国は日本に米軍を置くことで節約できる』(同上)
これは、「ティラニー・オブ・ディスタンス(Tyranny
of distance、距離の過酷さ)」と言われるものである、と高橋氏は、述べる。
専門家ならでは、の指摘である。
これまで、日本では言われてこなかったことだ。
もちろん、「その筋の人々」は、既に承知の事であった、だろうが。
この論理を武器に使えば、十分に対抗できる。
今そこにある危機に対応するには、時間こそが勝負である。
そうだとすると、現場に近い所に、普段に位置することが出来ることほど、重要で、有利な事はない。
⑤について。
『軍隊と言うのは、国権を発動する一国の武力行使組織。そんな外国の軍隊と基地を自国内に受け入れた場合、自国の国家主権の制限や侵害の事態を生み、必ずトラブルの元になるからだ。
古今東西、自国の地に外国部隊が拠点を設けた時の強い反発はいろいろな場所で見られてきた。安倍首相が本当にナショナリストであるならば、集団的自衛権の行使容認の後、米国優位・日本劣位の状況を克服するため、在日米軍基地の縮小を目指すべきだ』(同上)
この事は既に多くの例が証明していることである。
沖縄。
横須賀。
最も米軍の基地が多い(ここでは、面積の事を言っている。そして、これはあまり知られていないことである、と思う)、北海道。
岩国。・・・
例を挙げればきりがないくらいである。
⑥について。
「集団的自衛権の論議は確かに日本と米国が真の意味で対等の立場で協力していくためにはどうすればいいのか、を問うている。しかし、今は、日本側が言うべきことを言い、安保負担をめぐる国内世論と米国との認識ギャップを縮める努力をすることが急務のように思える」(同上)と高橋氏は、結ぶ。
米国が自国の国益を考えて、行動を取っているように、日本も日本で、独自に国益をよく考えて、行動する事が重要だと氏は言いたいのだと思う。
高橋氏は、安倍首相が、集団的自衛権の行使の容認を検討する前に、米国の思惑から離れて、自立して、行動することを望んでいる、のだと思える文章である。
4)本ブログの投稿者の見解
リンクした記事を読んで頂ければ解ることであるが、途中でも、多くを抜かしている。
それは、米軍が「いかに日本のために貢献しているか」という、米軍関係者や、要人の談話などである。
安保条約が片務的である、という指摘だ。
それらは、日米(軍事)同盟がいかに大切であるか、を説明するときに、日本においても、よく使われる論理である。
それに対抗する論理として、高橋氏が強調するのが、「距離の過酷さ」という論理だ。
これは、今までにない論理である。
(こういう言い方はあまり好きではないので、使いたくはないのだが)このような論理に目を付けることは、日本人が不得手とする所であろう。
だが、相手の論理を使って、その論理に対抗する事こそ、最も有効な反論の方法だ。とても重要な指摘である、と思う。
交渉においては、あくまで、冷静に対処する必要がある。そして、相手の最大の弱点を見つけることが重要だ。そうすれば、相手の譲歩を得ることが出来る。
孫氏の兵法にあるように、「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」である。
*
その意味では、太平洋戦争も、実は避けることが出来た。
ルーズベルトは、大統領選挙の三選に際して、「戦争をしない」と公約していたのであった。
「重ねて、重ねて、何度でもいう。絶対にあなたたちの夫や息子を戦場に送ることはない」と公約していた、のであった。
これはどこか(すでにお解りの事と思うが)の国の話ではない。米国の話である。公約こそは、政治家にとっての命、という国での、話である。
この事を知っていれば、ルーズベルトを「ダルマ」にしておけた。情報がいかに重要であるか、ということの証明である。しかも、この情報は、何も、秘密でもなんでもなかった。
米国民なら、誰もが知っていたことである。
山本五十六は、その米国に長く留学していた。
米国の事情を知らぬ訳がない。
知っていたのに、その情報の重要さを理解しなかった。(仮に、知らなくても、知る必要がある、と言う認識があれば、得られた情報である)
*
安倍首相が、本気で「日本を取り戻す」と考えているのなら、全力を挙げて、米国の真意を知る努力をするべきだ。
そして、かの国の最大の弱点を見つける必要がある。それを知れば、取引の材料に使える。なにも、言いなりになる必要など、ないのである。
安倍首相が、政治の目的をしっかりと認識していれば、集団的自衛権の行使の容認と言うような選択は、それをする余地は、なかった、であろう。
(思いがけず、長い記事になりました。折角、最後まで読んだのに、たいして得るものがなかった。そのような感想を持たれる記事ではない、と自負していますが、大方の批評をお待ちします。尚、引用文について、冒頭以外は、読書の便を測って、青字にしませんでした。)
(2014/7/3)