2014年7月21日月曜日

LS:現代日本教育考(1)「世界一多忙」か?日本の教員の勤務状況。

二宮金次郎
考えさせられることの多い内容を持った、記事である。
京都市の「無免許教師」の事を、取り扱ったばかりでもある。
すこし、理屈っぽくなるかもしれないが、意見を述べる。


1) 毎日新聞が、伝えた記事より 

文部科学省が、「学校活動を担う外部人材を大幅に増員する方針』にした、という記事である。(長い引用ですが、後で、要約します)


『文部科学省は、「世界一多忙」とされる日本の教員の勤務状況を改善するため、学校活動を担う外部人材を大幅に増員する方針を決めた。

「チーム学校」と名付け、福祉の専門家のスクールソーシャルワーカー(SSW)や外部の部活動指導者、事務職員を増員し、教員の負担を軽減。

授業に専念できる環境を整備し、子供のさらなる学力向上を図る。来年度予算の概算要求に盛り込んだ上で、今月中にも下村博文文科相が中央教育審議会に「チーム学校」の在り方を諮問する。


 中学教員を対象にした経済協力開発機構(OECD)の2013年の「国際教員指導環境調査」では、日本の教員の勤務時間は週53・9時間と最長(参加34カ国・地域平均は38・3時間)で、事務作業や部活動指導の時間が参加国平均に比べ3〜2倍長かった。
さらに、いじめや不登校、家庭環境への対応など授業以外の問題も教員が担うケースがほとんど。部活動がない小学校でも今後英語や道徳の教科化が想定され、負担軽減が急務になっている。

事態を重く見た同省は来年度から、教員以外のメンバーを増やしてサポート態勢を大幅に強化。

「チーム学校」として▽家庭や児童相談所、警察と連携し、いじめや不登校の課題解決を図るSSW▽子供の心のケアを担うスクールカウンセラー▽地域スポーツの指導者などが教員に代わって生徒を教える部活動指導員−−などを想定する。』(毎日新聞 7/17)
この記事の「ミソ」は、”「世界一多忙」とされている”と言う表現にある。

2)要約します

① 現在の日本の教員は、「世界一多忙」とされている。
② 学校活動を担うための外部人材を、大幅に増員する。

③ スクールソーシャルワーカー(SSW)や外部の部活動指導者、事務職員  を増員する。
④ このことで、授業に専念できる環境を整備し、子供の学力向上を図る。

⑤ 来年度予算の概算要求に盛り込み、財政の裏付けをする。
⑥ (OECD)の2013年の「国際教員指導環境調査」では、参加国平均に比  べ3〜2倍長かった。

⑦ 授業以外の問題で、教員の負担が増えている。小学校でも、今後教員の   負担が増える。
⑧ だから、今後は、地域で活動している諸団体との連携を強化していく。

3) 現在の、日本の学校現場。他の職業との比較(概算です)

日本の学校は、昨日から全国的に、40日余りの「夏休み」に入った。長期の「休み」だ。他にも、春休みと冬休みで、合計28日の「休み」がある。
以上を合計すると、68日。

これ以外に、国民の祭日がある。合計で、10日余り。日曜と重なれば、もっと増える。

これに、土曜日と日曜を加えると、100日。上の、68日に含まれる分を差し引くと、90日。
以上を総計すると、168日である。

普通のサラ―リーマンの場合を想定してみよう。
この計算は、単純である。100日+10日=110日だ。
ただし、これは、週休2日を、想定しての事である。

では、サラリーマンでない、職人さん_「ブルーカラー」と称されている人々_の、場合はどうか。

おそらく、週休2日という事業所は、ほとんど、ないであろう。
そうすると、50日+10日=60日だ。

教員との違いが、これだけある。

4) 現在の教員は、ハードワークか

この事を考える前に、上にあげた、(2)の①について、見てみたい。

朝日新聞の記事によると、_「世界一多忙」とされているのは_「2013年に実施した国際教員指導環境調査(TALIS)で、主に先進国の34カ国・地域が参加。08年に続き2回目で、初参加の日本では、全国から抽出した国公私立中学校192校の教員3484人と校長から回答を得た」結果である、ということだ。(http://www.asahi.com/articles/ASG6T5S3KG6TUTIL04D.html
ここが、問題のところである。この統計には、いわゆる『私学』を含んでいる。『私学』と「公立学校」を同等に比較することは、あまり意味がない。
学校が目指す目的も、教員の待遇、地位、責任も、すべてにおいて、違う。だから、上の統計は、現実をそのまま反映しているとは、思えない。
また、日本は現在、少子化の傾向にあり、児童数、生徒数が減っている。さらに、学区の規模自体、全国的に見れば、ばらばらである。この事も、考慮する必要がある。
また、記事が述べているのは、「参加34カ国」で、ということであり、「世界中」でということではない。それを、世界1であるというのは、_カッコつきであれ_誇張した表現である。単に、調査した国々との、比較においてという事でしかない。

5) 実際の現場は、どうなっているのか
さて、上で、「休み」としたことのは、意味がある。
学校_児童や生徒_が休みに入るのであって、教師は、「休暇」ではないからである。

この間も、給与は、支払われているのである。
だから、本来は、学校に出勤する義務がある。

ところが、例外的処置として、自宅研修と言う形にして、勤務をした_学校に出勤する義務をはたした_と見做しているのである。

この間に、実際に、どれ程の教師が、学校に出勤して、本来の業務をこなしているのであろうか。
せいぜい、部活を見る程度の事ではないであろうか。

これも、本当にどこまで真剣に行われているかは、疑問だ。なぜなら、毎年のように、多くの児童や生徒が、「熱中症」で、病院に搬送されているからである。

≪第1回は、ここまで≫
(2014/7/21)