2014年6月18日水曜日

ショート時評:マリキ首相の、「挙国一致の体制」への呼びかけは、空虚

この所、イラク情勢が、緊迫の度を深めてきている。
米軍の撤退後も、イラクは、戦闘が止まず、テロのよる犠牲者が後を絶たない。
スンニ派の過激派武装組織がイラク北部の都市をつぎつぎに掌握している、と報じられている。


『イラクのマリキ首相は17日、政権に批判的なイスラム教スンニ派の代表者らと共に演説し、挙国一致の体制を築くよう呼びかけた。挙国一致を印象付ければ、イスラム武装勢力への反攻作戦を展開するマリキ政権の支援に、米国が傾く可能性も出てくる。

直前には、マリキ首相のシーア派連合が、スンニ派最大の政党とのいかなる協力も拒否することを表明。マリキ政権は「大量虐殺(ジェノサイド)」に手を貸しているとして、サウジアラビアを批判していた』(ロイター 5/17) http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0ES35G20140617?sp=true
マリキ首相が、「挙国一致の体制を築くよう呼びかけ」るのは、良い事であろう。
イラクの事は、イラクの国民で解決するべき、だからである。他国に頼るべきではない。
だが、そうであるなら、「米国の支援を期待して」、挙国一致の体制を築くよう呼びかけるのは、おかしい。
マリキ首相の呼びかけは、説得力をもたないであろう。
反マリキ首相派の攻勢は、何よりも、米国の政権に頼ろうとすることへの、反発である、と考えられるからである。
マリキ首相は、今も米国から、武器や兵器の提供をうけている。
まず、米国からの武器や兵器の提供を、受けるのをやめるべきだ。やめない限り、「挙国一致の体制」の呼びかけは、むなしい。
14日には、ヘーゲル米国防長官が、空母「ジョージ・H・W・ブッシュ」を、ペルシャ湾へ派遣した。
よりにもよって、空母「ジョージ・H・W・ブッシュ」だ。
これは、かえって、反マリキ首相派の反発を強くするものであろう。

また、マリキ首相は、「米国流の近代法」による統治を、目指しているようだが、これも大きな反発を産んでいる原因であろう。
なぜなら、イスラムの国民においては、「イスラム教の聖典」こそが法律である、のだから。
全てが、イスラム教の法律に基づいて動く。この事を拒否しようとすれば、反発を受けるのは、当然である。
それは、人々の内面にまで踏み込むこと、であるからである。
挙国一致の体制」への呼びかけは、空虚なものだ。
マリキ首相が、米国からの支援をうけ、それに期待する限りは、自治減は不可能であろう。
(2014/5/18)