「警察の生命を脅かすような、いかなるものも持っていなかったのに、その人に狙いを定めて放水銃を撃った。それは犯罪行為であり、殺人だ」と、批判した。さらには、この国が」(韓国が)本当に民主主義国家なのか、疑わしい」と厳しい指摘をした。
韓国紙の「ハンギョレ」が、【放水銃で重体のペク・ナムギ氏のオランダ人姻戚ハロルド・モナン氏 「凶器もない年寄りに向け放水銃...犯罪であり、殺人」】というインタビュー記事を載せた。
インタビューに応じたのは、
『今月14日、ソウル都心で開かれた民衆総決起大会で、警察の放水銃に撃たれ倒れた農民ペク・ナムギ氏(68)が、12日間も意識を失ったまま、ソウル鍾路区ソウル大病院で治療を受けている。ペク氏の姻戚であり、次女のペク・民主化(ミンジュファ)氏(29)のオランダ人義父母のハロルド・モナン氏(63)とリタ・モナン氏(63)が23日、ペク氏のお見舞いのために韓国を訪れ、ソウル大学病院に足を運んだ』
そのハロルド・モナン氏である。
韓国の「デモ」と、民主主義に関する記事である。日本での「デモ」と民主主義について考える際に、参考になる指摘があるので、観ていきたい。
1) 犯罪行為であり、殺人だ
ハロルド・モナン氏は、「暴力的なデモだったため、放水銃をはじめとする公権力の行使は正当だった」という意見と、「市民に脅威を与える放水銃の使用は中止すべきだ」という意見について、どう思うかと聞かれて、次のように答えている。
2) 広場全体をぐるりと囲むことは違法
オランダでは、人々が集まっている広場全体をぐるりと囲むことは違法。それは、ちゃんと法律で決まっているのだという。
実は、このところに一番関心をひかれたので、この記事を取り上げた。日本人が、このように「反論」すれば、また、問題になる。
しかも、「水掛け論」に始終してしまいかねない。だが、オランダ人であれば、韓国とは利害関係がないので、穏やかな「論争」で終わることだろう。
「韓国は北朝鮮とは異なり民主的な社会だと思っていた。」
「どこが韓国で、どこが北朝鮮なのか、分からなくなる。」
「この国が本当に民主主義国家なのか、疑わしい。」
これらの指摘は、鋭いものだ。ここまで、言われても、今の韓国の現状を見るなら、反論は出来ないだろう。いや、韓国は、民主主義を尊重する国である、とは言えないだろう。
3) デモ隊が望むデモを安全に行うようにすること
ハロルド・モナン氏は、オランダでの「デモ」の様子を語る。オランダでは、警察は、「デモ隊が言いたいことを言えなくなるような」過剰警備は、行わない、と述べた。
その意味では、日本も、韓国のことを「笑う」ことは出来ない。
安保法制案に反対する、国会前の「デモ」では、警察は、装甲車まで繰り出した。動員された警察官は、8000人といわれる。
警察車両をズラーと車道の両側に並べ、「デモ隊」を、狭い歩道に閉じ込めた。
車道には、ほとんど、一般車両の通行がなかった、のに、である。
この過剰警備を、ハロルド・モナン氏が、実際に目にしたなら、氏は「卒倒」してしまうことだろう。日本は、また、「戦争前に逆戻りした」と思われるかもしれない。
「二度と日本には、行きたくない」と、言われることだろう。
韓国もひどい状態にあるようだが、日本も、最近の状況を考えると、「他国のこと」と、のんきにしてはおれない。
韓国も、日本も、民主主義が危機状態にある。それは、ひとえに、――両国とも――指導者の問題でもある、と言うところが共通している。
ここにこそ、真の憂うべき「民主主義」の危機が存在する。私は、そう思う。
(2015年11月26日)
韓国紙の「ハンギョレ」が、【放水銃で重体のペク・ナムギ氏のオランダ人姻戚ハロルド・モナン氏 「凶器もない年寄りに向け放水銃...犯罪であり、殺人」】というインタビュー記事を載せた。
インタビューに応じたのは、
『今月14日、ソウル都心で開かれた民衆総決起大会で、警察の放水銃に撃たれ倒れた農民ペク・ナムギ氏(68)が、12日間も意識を失ったまま、ソウル鍾路区ソウル大病院で治療を受けている。ペク氏の姻戚であり、次女のペク・民主化(ミンジュファ)氏(29)のオランダ人義父母のハロルド・モナン氏(63)とリタ・モナン氏(63)が23日、ペク氏のお見舞いのために韓国を訪れ、ソウル大学病院に足を運んだ』
そのハロルド・モナン氏である。
韓国の「デモ」と、民主主義に関する記事である。日本での「デモ」と民主主義について考える際に、参考になる指摘があるので、観ていきたい。
1) 犯罪行為であり、殺人だ
ハロルド・モナン氏は、「暴力的なデモだったため、放水銃をはじめとする公権力の行使は正当だった」という意見と、「市民に脅威を与える放水銃の使用は中止すべきだ」という意見について、どう思うかと聞かれて、次のように答えている。
【両方の立場に同意する。オランダ、またはヨーロッパで、警察は脅威になるような状況がある場合、誰かが警察に銃を向けるか、凶器で脅す場合は、警察の生命も危険になるので、そのような状況では警察は十分防御できる。
もしそのような状況なら、放水銃も使用できる。正当防衛の概念だ。もし誰かが警察に銃を向けたり、レンガを投げたり、殴ったりするような危険な状況ならば、警察の生命を守るために放水銃を使うこともできる。
しかし、重要なことは、それを使うのは、警察が危険な状況から逃れるためであって、相手を殺すためではないことだ。人が広場の真ん中で、一人で立っていた。警察の生命を脅かすような、いかなるものも持っていなかったのに、その人に狙いを定めて放水銃を撃った。それは犯罪行為であり、殺人だ。】これは、ごく「真っ当」な意見である、と思う。 いかなる弁明も出来ない、だろう。
2) 広場全体をぐるりと囲むことは違法
オランダでは、人々が集まっている広場全体をぐるりと囲むことは違法。それは、ちゃんと法律で決まっているのだという。
【オランダでは、警察が集会に集まった人たちの周りを車壁やコンテナ、バスなどで遮断することはできない。それは違法とされている。一般人の通行を確保するためにとか、建物の入り口を防ぐために、特定の部分だけを遮断することはできでも、人々が集まっている広場全体をぐるりと囲むことは違法だ。法律で定められている」「当時の集会が違法」だったという「ハンギョレ」記者の質問について、ハロルド・モナン氏は、それが問題である、と反論した。
【それが問題だと思う。なぜデモが違法となるのか?民主主義社会ではないか。非常に不幸なことだ。韓国は北朝鮮とは異なり民主的な社会だと思っていた。しかし、このようなことを目の当たりにすると、そうは思えない。どこが韓国で、どこが北朝鮮なのか、分からなくなる。オランダで英語の記事を読んだけど、どこに民主主義があるのか、分からなかった。この国が本当に民主主義国家なのか、疑わしい】
実は、このところに一番関心をひかれたので、この記事を取り上げた。日本人が、このように「反論」すれば、また、問題になる。
しかも、「水掛け論」に始終してしまいかねない。だが、オランダ人であれば、韓国とは利害関係がないので、穏やかな「論争」で終わることだろう。
「韓国は北朝鮮とは異なり民主的な社会だと思っていた。」
「どこが韓国で、どこが北朝鮮なのか、分からなくなる。」
「この国が本当に民主主義国家なのか、疑わしい。」
これらの指摘は、鋭いものだ。ここまで、言われても、今の韓国の現状を見るなら、反論は出来ないだろう。いや、韓国は、民主主義を尊重する国である、とは言えないだろう。
3) デモ隊が望むデモを安全に行うようにすること
ハロルド・モナン氏は、オランダでの「デモ」の様子を語る。オランダでは、警察は、「デモ隊が言いたいことを言えなくなるような」過剰警備は、行わない、と述べた。
【オランダでも、様々なデモがたくさん行われている。通常の場合、デモ隊が5000人程度集まれば、目に見える警察は10人ほどだ。他の警察は、目立たないところで、万が一の状況に備えて待機している。なぜデモ隊の前面に出ないのかというと、警察がデモ隊を刺激させて、他の問題が起こる可能性があるからであり、警察の存在自体が、デモ隊が言いたいことを言えなくなるような、妨げになることもあるからだ。
オランダでもやはり3〜40年前のデモでは逮捕された人も多く、ケガ人もたくさん出た。しかし、その時、このようにデモを進めたり、鎮圧してはならないということを学んだため、今ではそういうことは起きない。デモ隊が望むデモを安全に行うようにすること、また万が一の状況に備えて待機することが警察の役割だ】民主国家というものは、モナン氏が言うような国家のことをいうのであろう。
その意味では、日本も、韓国のことを「笑う」ことは出来ない。
安保法制案に反対する、国会前の「デモ」では、警察は、装甲車まで繰り出した。動員された警察官は、8000人といわれる。
警察車両をズラーと車道の両側に並べ、「デモ隊」を、狭い歩道に閉じ込めた。
車道には、ほとんど、一般車両の通行がなかった、のに、である。
この過剰警備を、ハロルド・モナン氏が、実際に目にしたなら、氏は「卒倒」してしまうことだろう。日本は、また、「戦争前に逆戻りした」と思われるかもしれない。
「二度と日本には、行きたくない」と、言われることだろう。
韓国もひどい状態にあるようだが、日本も、最近の状況を考えると、「他国のこと」と、のんきにしてはおれない。
韓国も、日本も、民主主義が危機状態にある。それは、ひとえに、――両国とも――指導者の問題でもある、と言うところが共通している。
ここにこそ、真の憂うべき「民主主義」の危機が存在する。私は、そう思う。
(2015年11月26日)