2015年11月20日金曜日

中国軍参戦で、米軍が敗退「北側がソウルを再占領」

<正村 戦後史(47)>
今回は、中国の参戦を読んでいきます。国連軍が38度線を超えたので、中国軍が介入してくることになりました。その中国軍の反撃で、再びソウルが占領されます。



 中国軍の参戦

≪国連軍が38度線を超える北進をめぐって意見が対立した。イギリスなどは、北の侵攻撃退と平和回復が国連軍の目的であり、38度線で追撃をやめるべきだと主張した。アメリカ政府内部にも慎重論があった。

38度線を超える北進はソ連または中国の介入を招き、第3次世界大戦を誘発する危険も大きいという理由からであった。戦後4年間はアメリカが原爆を独占したが、1949年9月にソ連の原爆実験が確認され、両陣営が核兵器をもって対峙する時代になった。

第三次世界大戦は核戦争だと考えられはじめた。硬派は慎重論を無視した。マッカーサーは、満州を爆撃してもソ連は参戦しないと考えた。中国は当時は原爆をもたなかった。

アメリカが原爆を使用しても中国は対抗手段がなく、ソ連は中国防衛のため第三次世界大戦の危険はおかさないと彼は判断した。アメリカ国民のあいだでは北進論が優勢であった。

アメリカ国民の多数はアメリカの威信にかけても北を徹底的に叩きのめすべきだし、北を温存すれば侵略が繰り返されると考えた。北朝鮮軍は崩壊しつつあり、北進による朝鮮統一は容易であるように見えた。

9月27日、トルーマンはマッカーサーに北進の許可を与えたが、陸海軍ともに満州・ソ連との国境を超えないこと、国境地帯では韓国軍以外は使わぬことを条件とした。10月3日、韓国軍が38度線を超えた。

10月7日、国連総会が「朝鮮全土の安全の確保と統一朝鮮民主国家樹立」のため国連軍北進を了承し、米軍も38度線を超えた。トルーマンはワシントンの支持を無視する傾向のあるマッカーサーの牽制のため、10月14日、ウェーク島でマッカーサーと会談した。

マッカーサーは中国とソ連の介入はありえないと主張した。国連軍は10月20日にピョンヤンを占領した。マッカーサーは、韓国軍だけでは弱体だとして米韓全軍を甲緑江へ進撃させた。

・中国では「抗米媛朝」のキャンペーンが展開されていた。10月1日、周恩来首相が建国1周年の国慶節に抗米媛朝を強調した。同日、周恩来は北京駐在インド大使に「米軍が38度線を超えれば中国は戦争に介入する。韓国軍だけなら派兵しない」と語った。この警告は、インド政府からワシントンへ、さらに東京へと伝達された。



10月25日、韓国軍部隊が正体不明の軍隊に包囲されて大打撃を受けた。各地で米韓軍は強敵に遭遇、中国軍大挙介入が判明した。名目は義勇軍だが、林彪指揮下の精鋭の本格的参戦であった(林彪は翌1951年の正月攻勢で負傷し、彭 徳懐が代わった)。

先頭が甲緑江岸に達していた国連軍は退路を断たれて壊滅の危険に直面し、敗走し始めた。退却する国連軍について多数の民衆が南へ移動した。

・中国軍介入と米史上未曾有の大敗走はワシントンに衝撃を与え、11月30日、トルーマンは「原爆使用も辞さない」と発言して同盟国を驚かせた。12月初旬英首相アトリーはワシントンでトルーマンと会談し、戦争を朝鮮半島に局限する原則を確認した。

12月14日、 国連総会は、インド、イラン、カナダの招請でニューヨークにきた中国代表と接触し、「現状での停戦」を打診した。国連軍がすでに38度線まで後退した時点での「現状」であった。

中国は、(1)外国軍隊の即時完全撤退、(2)アメリカ軍の台湾からの撤退、(3)中国の国連加盟という厳しい条件を示した。停戦は遠のいた。

・国連軍を指揮していた第8軍司令官ウォーカー中尉が、12月23日、車両事故で死亡し、後任に第2次大戦中イタリア戦線で活躍したリッジウェイ中将が任命された。

中朝軍は、1951年1月1日38度線を超えて南進、1月14日にソウルを再占領した。リッジウェイは、国連軍の士気高揚と防衛線構築に全力をあげつつも南朝鮮防衛は困難と判断、日本への撤退計画をひそかにマッカーサーに提案した。

マッカーサーは、現状では全面撤退の可能性ありとして、ワシントンに増援派遣を要請した。ワシントンは、これ以上の兵力は回せないという理由で拒否した。≫


 ソウルが再占領

マッカーサーの「読み」が外れて、中国軍の参戦してくることになります。

この影響は大きく、再び、ソウルが占領されます。米軍も、原爆を使うことは出来ず、結局敗退していきます。

ソ連が、すでに原爆を保有していたことが、大きな原因でした。つまり、原爆は、武器としての「役目」を負えてしまいます。

それでも、これ以後、多くの国が、原爆の保有向かって、邁進していくことになります。

「核の傘」は、もはや「張り子の虎」であったのにも関わらずです。


(2015年11月20日)

0 件のコメント: