2015年11月7日土曜日

WSJ「原爆投下を神に感謝」(Ⅵ)「日本軍、”情報軽視”が原因=B29爆撃機も原爆開発も想定外」

(空の”要塞”、B29戦略爆撃機)
日本軍は、太平洋戦争で、「情報戦」に負けた。「B29爆撃機の登場」も、「原爆開発」も、「想定外」。日本軍の「情報軽視」が原因で、その情報を得ることが出来なかった。「予測」することすら、できなかった。
我々日本人は、――少なくとも、私は――「口が裂け」ても、「神に感謝する」などとは言わない。もちろん、「神を呪う」とも言わない。もし、かりに「呪う」とすれば、その相手はほかにいるからだ。

そこで、これまでとは違った「切り口で、迫ってみたい。「原爆投下」と、「情報戦」ということに焦点を当てて、考えてみたい。

なぜ、日本軍は、「減額投下」を予測できなかったのか。防ぐことが出来なかったのか。軍部は、米国が原爆を開発していることを、知らなかったのか。

これらのことを検討してみたい。
今回は、ロケット博士の糸川英夫氏の著書を参考にして考えてみる。

糸川英夫は、戦中は「戦闘機の設計に携わっておられた。有名な戦闘機の「隼(=一式戦闘機)」も、糸川博士が設計に参加した。ほかには、「鍾馗」という優秀な戦闘機を設計された。

これは、ドイツの「メッサー・シュミット」より、優秀であった。話は、ここから始まる。


 「B29爆撃機」の登場
≪私は技術者として命令どおりの大役を果たしたのだが、しかし鍾馗は実戦にはほとんど役にたたなかった。鍾馗が飛び始めたの時、実際に日本の一番脅威となっていたのは、戦闘機よりB29爆撃機だったからである。
B29は1万メートル以上の、当時としては超高度を飛びそれだけの高高度飛行能力のない鍾馗は、B29に手も足も出せなかったのである。
日本が最終的に降伏に追い込まれたのは、サイパン島から飛んでくるB29によって、大都市だけでなく中小都市までは破壊つくされたからである。その最後に来たのが、広島と長崎への原爆投下であった。
つまり、せっかくに日本の総力をあげて開発した鍾馗戦闘機も、その敵として登場するB29の見通しを誤ったために、国の防衛に十分な役割を果たせなかった。・・・
戦闘機設計者の私としては、どんな形でもB29に関する情報が欲しかった。それさえあれば、鍾馗を設計変更出来たし、日本の降伏も違った形になっていたのである。そして私は、戦後、自殺まで考えなくともよかったのだ。≫

 日本は情報戦に負けた

以下に続く「余談」に、重要な指摘が含まれている。
≪余談だが重要なので付け加えると、私が疑問に思うのは指導者たちが、アメリカがB29という高高度爆撃機を開発していたことを、なぜ、掌握していなかったのかということである。
原爆が投下されたときに、軍は「新型爆弾」としかは発表しなかった。それから考えると、日本はアメリカが原爆を開発していることに気づいていなかったことになる。
もし、そうなら、日本は兵力の戦いの前に情報の戦いで負けていたことになる。・・・
当時の日本とドイツの同盟関係を考えれば、ドイツがアメリカの原爆開発を日本の知らせなかったとは考えにくい。ドイツが日本に極秘にしたのだろうか敵からも味方からも原爆開発情報をキャッチできていなかったとすれば、日本の情報戦はいささかお粗末だったということになる。
太平洋戦争で日本は情報戦に負けたといっていいだろう。≫

 「情報の重要性」の認識の欠如

糸川博士は、戦争において勝敗を決するのは、戦力が30%、情報が70%である、という。孫子の兵法をひいて「敵を知り己を知れば百戦して百勝」の通りである、という。

そして、情報を収集するにはシステムが必要だし、資金も必要。さらに、肝心なことは、「当局者が情報の重要さを理解していなければならない」、と述べる。


このことは、決定的重要である私も思うが、日本の軍部の指導者は、この認識を欠いていた。

それは、「レーダ―の重要性」さえ理解していなかったことからも、明らかなことである。戦後になって、占領軍から、「八木アンテナ」のことを聞かれても、軍人は、何のことか理解できなかった。

この「八木アンテナ」を利用し、米国はレーダーの開発に成功した。このことで、日本の戦闘機は「バタバタ」と撃ち落されることになった。

「竹ヤリで、爆撃を打ち落とす」などという「バカげたこと」を国民に強いるような頭の程度では、近代戦は戦えない。(もちろん、本気でそんなことを考えていたとは思えないが。)

いずれにしろ、日本の戦争指導者が、「情報の重要性」を全然「解っていなかった」ということは、否定しようがない。


 日本の安全保障の「危うさ」

糸川博士の「証言」の通りであれば、――「B29爆撃機」の情報があれば――米軍に、日本の空を占領されるということはなかった、と思う。

そして、「エノラ・ゲイ」を向かい撃つことが出来たと思う。そうすれば、広島が原爆の被害にあうこともなかった、と考えられる。

すべては、「情報」の入手を怠った軍部の責任である。「情報の重要性」を理解しなかった、指導者の「脳力の低さ」に起因する。

戦争は、「腕力でする」ものではなく、「頭(=頭脳)でする」ものだという認識が欠如していたことが、日本軍の致命的な欠陥であった。

さて、この「日本軍の致命的な欠陥」を、現代の日本の指導者は、「認識している」であろうか。真剣に検討したことがあるだろうか。

私には、どうも、「そうとは思えない」のである。もし、この私の予想があたっていたとすると、日本の安全保障は、「危うい」といわねばならないだろう。


 今回で、このシリーズを終わりにしたいと思います。

6回にわたり、WSJの記事についての「反論」「感想」「疑問」などについての記事を投稿してきました。「飛び飛び」の投稿になったことで、読者の皆さんには、「読みずらかった」と思います。

この点は、反省しています。

原爆に関することは、これで終了という訳ではありません。これからも、機会があるごとに、記事を投稿していきたいと思っています。

(2015年11月7日)

0 件のコメント: