2015年11月22日日曜日

マッカーサー元帥の命令「警察予備隊の創設の『舞台裏』」

<正村 戦後史(50)>
今回は、日本再武装への動きの「背景」に迫る文章を読んでいきます。警察予備隊の創設は、マッカーサー元帥の命令でしたが、複雑な「いきさつ」が存在しました。その「舞台
裏」を観ていきます。


それは、同時に、米国の安全保障に密接に関係していたからです。


 「日本再武装」の舞台裏

≪マッカーサーが警察予備隊の創設と海上保安庁の大増員を指示したのは、直接には朝鮮戦争の勃発により在日米軍を朝鮮へ出動させる必要が生じ、日本国内の治安維持に不安が生じたためである。

しかし、ワシントンでは、これよりはるか以前に、日本の再軍備を促進する必要があるという意見が台頭していた。

・アメリカの対日政策の基調が変化したことは、1948年1月6日のサンフランシスコにおけるロイヤル陸軍長官の演説にも示されていた。

同年3月、アメリカ国務省政策企画部長「ジョージ・F・ケナン」は、占領下の日本を視察したのち国務長官あてに提出した報告書で、それまで検討されてきた対日講和の延期を提案すると同時に、日本の安全保障に関連して以下のような進言を行った。

(1) 講和成立まで米軍は駐留させるが、兵力は最小限に縮小する。
(2) 講和後の日本の安全保障はそのときの情勢によって決定する(このとくは、非軍事化または制限付き再武装が考えられていた)。
(3) 沖縄はアメリカが永久に保有し、基地を拡張する。
(4) 横須賀海軍基地を拡張し、講和後も継続使用する。
(5) 警察力を強化し、装備を改善する。

・ケナンは、そのほか、日本におけるこれ以上の改革は中止し、日本側の自主性にまかせること、対日政策の最重点を経済復興に向け、インフレーション抑制をはかるとともに長期的な対日援助を考えること、公職追放を緩和することなどを勧告した。

・国務省では、1948年の5月以後、ケナンを中心に「アメリカの対日政策に関する諸勧告」と題する政策をまとめた。それは、同年10月7日、国家安全保障会議を経てトルーマン大統領に承認されたNSC(国家安全保障会議)13/2と呼ばれる文書になった。

ケナン報告書の考え方が盛り込まれ、琉球、小笠原などの長期保有と基地開発や横須賀海軍基地の利用などとともに警察力強化の必要が指摘された。

・太平洋戦争で日本軍との死闘を経験したために占領初期に日本の非軍事化にもっとも熱心であったアメリカ軍部は、冷戦表面化と同時に、対ソ対決と日本国内の治安維持の必要から、一転して日本の再軍備にもっとも熱心な態度を示すようになった。

・NSC13/2の決定過程で、陸軍省は15万に「国家警察軍」の創設という形の日本の再武装を主張した。国務省側は、「憲法第9条が非現実的であることは信じるが、そのようにあからさまな規定を入れるべきではない」と反対し、「警察力の増強」と言う表現にとどめた。

陸軍省は、マッカーサーあて書簡で、NSC13/2の「警察力の強化」は警察改革の原則をかえることなしに非武装の日本が占領終了後に効果的な警察力による保護を獲得できるように人員・装備の強化をはかることを意味すると述べ、「災害または反乱に対処しうる適切な機動的国家警察予備隊」を創設することとアメリカのFBIに似た治安情報収集機関をつくることを要請している。

・ワシントンで日本再軍備論が強まってからも、マッカーサーは反対の態度をとっていた。1948年3月、訪日中のケナンと陸軍次官ドレーパーがマッカーサーと対談したさい、ドレーパーは日本再武装の必要を要請したがマッカーサーは反対し、ケナンは中間に立って再武装か完全非武装化は講和後の情勢をみて選択すればよいと論じた。

・マッカーサーは、GHQ民生局のスタッフの原案が基礎になった19478年5月施行の新憲法を表面上は日本国民の自主的選択にみせかけていた。戦争放棄条項もマッカーサー自身が指示したものであったが、彼はこの憲法を日本国民自身の賢明な選択として称賛しており、にわかに再軍備に賛成するわけにはいかなかった。

・マッカーサーが日本再軍備に抵抗したため、ワシントンは、マッカーサーを更迭するか、自力の防衛体制の確立もできない日本は放棄するという政策を採用するか、という選択を問題にせざるをえなかった。一時期、南朝鮮防衛をあきらめたのと同様にアメリカ政府内部で日本放棄論が強くなった。≫

J・F・ケネディとフルシチョフ

 「ケナン報告書」と沖縄

上の文章を読んでいくと、いかに米国が「得手勝手」な国家であるかということが、よく分かります。もちろん、その事と米国の国民とは、直接的には関係がありません。

ここのところを理解しておくことは、とても重要なことである、と思います。あくまでも、ここで言う米国とは、「ワシントンのこと」です。

このことについては、私のホームページの記事でも言及しています。

日本人の錯誤  「米国とは、オバマ政権のみである」と信じている事

戦前の日本の指導者もここの理解が足りませんでした。そのことが結果的に、日本の「敗戦」に繋がることになりました。

これは、小室直樹博士の論です。

それにしても、「ケナン報告書」は、恐るべき内容を含んでいると思います。とくに(3)、(4)は、決定的です。

この時点ですでに米国は、日本の占領終了後の体制について、日本の――事実上の――「占領の継続」を決めていた、ということが出来ると思います。

とくに、(3)の「沖縄はアメリカが永久に保有し、基地を拡張する」というのは、その通りに実施され、それは現在も続いていることは、読者の皆さんもご存じのとおりです。


 ここのところは重要ですので、次回も続けて読んでいきたいと思います。

(2015年11月22日)

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