2015年12月18日金曜日

顧問教師の責任は?「活動中に熱中症で、2億円を県に命令」

きわめて、妥当な判決である、と思う。
テニスの部活動中に熱中症で倒れて重い障害が残った。裁判所が、女性側の請求を退けた1審の神戸地裁判決を変更。将来の介護費用や慰謝料など計約2億3000万円の支払いを、県に命じた。だが、顧問の教師の責任は、不問にふされた。


県教委側は、「判決内容を検討し、対応を考えたい」とコメントしたようだ。


 計約2億3000万円の支払いを、県に命じた=「毎日新聞」から

テニスの部活動中に熱中症で倒れて重い障害が残ったとして、兵庫県立龍野高校(同県たつの市)の2年生だった女性(24)=兵庫県太子町=と両親が県に約4億7000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が22日、大阪高裁であった。森宏司裁判長は女性側の請求を退けた1審・神戸地裁判決を変更し、将来の介護費用や慰謝料など計約2億3000万円の支払いを県に命じた。【服部陽】

森裁判長は、顧問の教諭が出張のために練習に立ち会わない代わりに、主将だった女性に事前に指示した練習内容について「熱中症に陥らないように指導すべきだった」と指摘。安全配慮義務違反があったと認定した。】



 顧問の責任を問うべきだ

当日は、「初夏にしては暑く、湿度も高かった。女性はラリーの最中、ふらついて座り込んだ。部員から休憩を勧められても1〜2分休むだけで、顧問が指示した練習をこなしていったという。そしてメニュー最後のランニングで再び倒れ、救急搬送された」のだという。

判決では、「練習の様子を直接監督できない以上、部員の健康状態に配慮すべきだった」と判定した。

「練習を軽くしたり、水分補給の時間を設けたりし、熱中症になるのをあらかじめ防ぐべきだったと結論付けた」と毎日の記事は、書く。

だが、裁判所は、「顧問は常時練習に立ち会う義務がある」との原告側の主張については1審同様に退けた」

問題は、ここである。

「顧問は常時練習に立ち会う義務がある」は、別としても、顧問の責任を直接的に問わないのは、問題があると、私は思う。

原告側が、県を相手取って、裁判をしている以上は、「命令を出すべき相手」が、県になることは、当然のことである。しかし、真に問われるべきは、顧問の責任であると思う。

確かに、今回の場合のような「部活動における教師の職務上の”過失”を直接的に問うこと」は、過酷な要求である、かもしれない。

だが、顧問の責任を問うのではなく、その責任を県に負わせるようでは、今回のようなことを、「防止すること」は、出来ないだろう。

何があっても、どんなことでも、教師の責任ではなく、県の責任にされてしまうようでは、結果的には、県の住民が責任を取らされる、ということになる。

これでは、「自分で自分の責任を取らされた」ということになるではないか。県が支払うお金は、県民の払う税金であるからだ。

根本的には、学校の教師に、部活の顧問を押し付けること自体に、問題がある。もっと、言えば、学校の部活動自体に問題がある。

個人的には、学校の部活動は、廃止すべきである、と考えるが、現状ではそれは困難を伴うだろう。

まして、5年後には、東京オリンピックが控えている。学校の――特に、高等学校での――クラブ活動が、今後、ますます、ヒートアップしていくことが、予想される。

考えられる対策は、ひとつある。それは、教師以外の「人材」を活用することである。すでに退職した教師、運動クラブなどを現に指導している民間の人びとなどの手を借りることだ。

彼らに、与えられた責任にたいする権限を与えて、常時、クラブ活動を監督してもらうようにすることである。

つまり、責任と権限をもった「大人」が、常時、見守ることにするのである。とりあえずは、これで相当な程度で、このような事故を減らすことができるだろう。

公立学校におけるクラブ活動は、全面的に見直すべき時期に来ていると思う。こういう事故があると、特にその観を深くする。


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(2015年12月18日)