その言葉は、安倍政権や高村氏、自民党に、そっくりお返しをする。それは、彼らにこそ、あてはまる言葉である。安保法制案の審議が、揺らいでいる。そんななかで、野党の審議手法を批判して、「これからこの国の政治はどうなっていくのか、末恐ろしい気がする」と、
自民党の高村正彦自民党副総裁が批判した。
朝日新聞が伝えた。
★「この国の政治どうなるのか末恐ろしい」 自民・高村氏＝朝日デジタル
◆ 安保法制案の中身はどうなっているか
今更ながらではあるが、今国会で審議中の安保法制案について、簡単にみておきたい。
従来の法律を改正する法案が、１０本。
この１０本を束ねて、「平和安全法制整備法」として、１本にした。
「国際平和支援法案」を、別の１本として、提出。これは、新規の法案。
安倍政権は今回、実際には、合計１１本にも及ぶ法案を、あたかも２本であるかの如くにして、提出した。
以下にその法案を列記する。
【一括法案（１０の改正法案）】
① 武力攻撃事態法改正案
② 重要影響事態法案（周辺事態法を改正）
③ ＰＫＯ協力法改正案
④ 自衛隊法改正案
⑤ 船舶検査法改正案
⑥ 米軍等行動円滑化法案（米軍行動円滑化法を改正）
⑦ 海上輸送規制法改正案
⑧ 捕虜取り扱い法改正案
⑨ 特定公共施設利用法改正案
⑩ 国家安全保障会議（ＮＳＣ）設置法改正案
【新法案（恒久法案）】
⑪ 国際平和支援法案
これらの１１本の法案を、与党は、「８０数時間」の審議で衆議院を通過させる方針でいるようだ。
★ 安保法制１１法案きょう閣議決定 野党、一括改正に反発＝朝日デジタル
◆ 安倍首相をはじめ、高村氏ら与党のやりかたこそ、「末恐ろしい」
朝日の記事は、次のように書く。
・安全保障法制について、野党は「早く国会で審議しろ」と言っていたのに、いざ審議が始まると四の五のいって審議に応じようとしないのには憤りを感じる。
実のある審議のために、唐突な質問は避けて細かい内容は事前に質問項目を出す、という慣行を民主党は破り、１５年以上前の政府委員の答弁についていきなり岸田文雄外相に質問した。そんなことは事前通告が無ければ答えられるわけがない。
テレビに大臣が戸惑った姿を映させて「一本取った」という、戦術だけうまい若い議員をみると、これからこの国の政治はどうなっていくのか末恐ろしい気がする。
高村氏が述べたことの、ポイントは３点。
・野党は、国会への上程を急がせておきながら、今度は審議に応じない。
・議会での審議は、前もって、質問書を出すのが慣例である。
・唐突な質問で相手を立ち往生させて、満足している。
私が思うに、野党が早急な審議を求めていたのは、安倍首相が米国での議会演説をする前においての話ではないか。
「日米防衛協力のためのガイドライン」の改正を米国と協議する前に、国会での審議が必要だ、という意味で、早期の法案審議を要求した。
これが野党が、「早く審議しろ」といった理由だろう。
「前もって質問書を出すのが慣例だ」というが、その事と、「実のある審議」ができるかどうかという事とは、直接的には関係があるまい。
国会での審議は、本来は、「ぶっつけ本番」であるべきだ。
そうしてこそ、お互いに緊張感を持つことができるし、聴いている国民も真剣に聴くことができる。
前もって質問書を出せば、役人の書いた答弁書を読み上げるだけのものにしかならないであろう。
それは、この岸田氏の例が証明している。
若い議員が、テレビの中継が入ることで（実際には、全会議をインターネットで、ライブで見ることができる。）、「格好のいいところを見せたい」としたことぐらいで、大げさに嘆くほどのことか。
「これからこの国の政治はどうなっていくのか末恐ろしい気がする』とまで、記者らの前で話すほどのことか。
むしろ、１１本もの法案をたった２本にまとめ、８０時間あまりの審議で、衆議院を通過させてしまおうとする、高村氏ら与党のやりかたこそ、「これからこの国の政治はどうなっていくのか末恐ろしい気がする」、と言わねばなわない。
◆ 安倍政権こそ、正面から、野党の質問に誠実に答えるべきだ
また、最高責任者である首相が国民に説明しようとすると「長い」「あなたに聞いていない」と言って邪魔する。「国民によく説明しろ」「国民が理解していない」と言っていた野党は、本当は「説明されたら困る」「理解されたら困る」と思っていると断ぜざるを得ない。責任野党なのであれば、しっかり中身で勝負してもらいたい。
長い、短いは、お互い様であろう。
確かに野党側にも、反省すべき点はある。
それは、安倍首相をはじめとする政府側もそうだ。
だがそれを、本当は説明されたら困る。
理解されたら困ると思っている。
とまで、断じるのはいいすぎだ。
これまでの審議を聴いた中においては、「しっかり中身で勝負してもらいたい」という言葉は、安倍政権にたいしてこそ、むけられるべきである。
安倍政権こそ、言葉を勝手に定義しなおしたりすることなく、答弁をはぐらかしたりすることなく、正面から、野党の質問に誠実に答えてもらいたい。
これが、テレビでの中継の時の審議だけでなく、ネットでの生中継を聞いた（見た）感想である。
（２０１５年６月３日）
