衆院憲法審査会の自由討議において、自民党が、―「憲法違反である」という、参考意見を述べた―学者を批判した。
また、自民党、民主党は、ともに砂川判決=「最高裁判決」に関しても、論戦をたたかわせた。
そこで、改めて、問題になっている砂川判決=「田中判決」そのものについて、検討してみたい。もちろん、法律の専門家ではないので、私見である。
また、現時点における観方(私の)をしめした。
Ⅰ) 中日新聞 より
Ⅱ) 砂川判決とは、何か
① 砂川事件とは
日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法は、1952年(昭和27)5月7日に成立した。
もちろん、これは、「旧安保条約」に基づいている法律である。
現在は、廃止されて、新しい、「地位協定」になっている。
「第1条2」で、米軍について、規定している。
そこには、以下のように書かれている。
が、この文を読むと、おかしなことに気がつく。
そのせいか、この判決には、判事のよる膨大な量の「補足意見」が、ついている。それは、判決文の7倍に相当する。
ただし、明確な『反対意見』は、ない。(この判決は、全員が、賛成した)
Ⅳ) 「田中判決」は、論理的に破たんした、判決である
なぜ、このような多くの補足意見が付けられたのであろうか。
それは、この判決文が、「まともな」判決文になっていないからである。
それは、次のことでもわかる。
① 安全保障条約は、司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のもである。
だから、違憲の審査はしない。
② そして、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のもの、である。
③ このように述べながら、今度は、アメリカ合衆国軍隊の駐留は、違憲無効であることが、一見極めて明白であるとは、到底認められない、というのである。
判決文は、このように述べている。
さらに、整理する。
①では、「審査」をしない、といっている。(否定)
ところが、②では、審査には、「判断」が必要である、という。(留保)
③では、違憲無効ではない、という「判断」をしている。(肯定)
つまり、この判決文は、論理が一貫していない。
論理的に破たんした、判決文である、と断定できる。
だから、多くの「補足意見」(言い訳)が必要であった、と思う。
結論的に言えば、自民党が、この判決文を持ち出すのは、戦略的に観て「誤り」であろう。
この「田中判決」をもって、今回の安保法制案を正当化すれば、最後には、「破たん」をきたすことになろう。
※
*各裁判官による「補足意見」は、興味ある内容を含む。
そして、実は、この「補足意見」のほうが、審査をした裁判官の考えをよく表している。
だが、今は、記事が長くなってきているし、それを検討する時間もない。
それについては、近いうちに記事にしたい。
*今現在(11時30分)、衆議院の安保法制案の審議は、民主党が出席を拒否したことで、審議が止まったままである(実際には、「時計」は進められているが)。
それを見ながら、作成した。
(関連サイト案内)
⇒最高裁長官「一審は誤り」 砂川事件、米大使に破棄を示唆=47ニュース
(2015年6月12日)
また、自民党、民主党は、ともに砂川判決=「最高裁判決」に関しても、論戦をたたかわせた。
そこで、改めて、問題になっている砂川判決=「田中判決」そのものについて、検討してみたい。もちろん、法律の専門家ではないので、私見である。
また、現時点における観方(私の)をしめした。
Ⅰ) 中日新聞 より
衆院憲法審査会は十一日、自由討議を行い、憲法学者三人が先の参考人質疑で安全保障関連法案を「違憲」と明言したことをめぐり、与野党が論争した。政府が集団的自衛権を容認する根拠に挙げる砂川事件の最高裁判決(一九五九年)の位置付けが最大の対立点になった。政府が行使容認の理由にしている安全保障環境の変化も論点になった。自民党の委員からは安保法案を違憲と断じた学者への批判が相次いだ。
自民党の高村正彦副総裁は、自衛の措置を認めた砂川判決について「集団的自衛権の行使は認められないとは言っていない」と説明した。その上で「最高裁が示した法理に従い、自衛の措置が何であるかを考え抜くのは憲法学者でなく政治家だ」と主張。「違憲だという批判は当たらない」と述べた。
⇒自民が学者批判展開 「砂川」根拠に、違憲指摘に反論
Ⅱ) 砂川判決とは、何か
① 砂川事件とは
砂川事件は、砂川闘争をめぐる一連の事件である。
特に、1957年7月8日に特別調達庁東京調達局が強制測量をした際に、基地拡張に反対するデモ隊の一部が、アメリカ軍基地の立ち入り禁止の境界柵を壊し、基地内に数m立ち入ったとして、デモ隊のうち7名が日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法違反で起訴された事件を指す。(wikipediaより、引用した。なお、ここに言う「第6条」というのは、改定された協定であり、事件当時のものではない。事件当時の、正式なものは、下に示してある。)
日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法は、1952年(昭和27)5月7日に成立した。
もちろん、これは、「旧安保条約」に基づいている法律である。
現在は、廃止されて、新しい、「地位協定」になっている。
「第1条2」で、米軍について、規定している。
そこには、以下のように書かれている。
この法律において「合衆国軍隊」とは、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第一条に基き日本国内及びその附近に配備されたアメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍であつて、日本国内にある間におけるものをいう
② 1審判決(伊達判決)=東京地方裁判所(裁判長判事・伊達秋雄)
東京地方裁判所は、1959年3月30日、
「日本政府がアメリカ軍の駐留を許容したのは、指揮権の有無、出動義務の有無に関わらず、日本国憲法第9条2項前段によって禁止される戦力の保持にあたり、違憲である。
したがって、刑事特別法の罰則は日本国憲法第31条(デュー・プロセス・オブ・ロー規定)に違反する不合理なものである」
と判定し、全員無罪の判決を下した。
③ 最高裁判所判決(大法廷、裁判長・田中耕太郎長官。なお、この記事においては、「田中判決」と呼ぶこととする。)
これに対し、検察側は直ちに最高裁判所へ跳躍上告している。
二審は、制度として規定されていない、からであった。
二審は、制度として規定されていない、からであった。
最高裁判所は、同年12月16日、
「憲法第9条は日本が主権国として持つ固有の自衛権を否定しておらず、同条が禁止する戦力とは日本国が指揮・管理できる戦力のことであるから、外国の軍隊は戦力にあたらない。したがって、アメリカ軍の駐留は憲法及び前文の趣旨に反しない。
他方で、日米安全保障条約のように高度な政治性をもつ条約については、一見してきわめて明白に違憲無効と認められない限り、その内容について違憲かどうかの法的判断を下すことはできない」
として原判決を破棄し地裁に差し戻した。
・・・よりわが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、わが憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではない・・・
平和条約六条(a)項但書には「この規定は、・・・日本国を他方として双方の間に締結された・・・外国軍隊の日本国の領域における駐とん又は駐留を妨げるものではない。」とあつて、日本国の領域における外国軍隊の駐留を認めて(おり)、・・・
本件安全保障条約は、右規定によつて認められた外国軍隊であるアメリカ合衆国軍隊の駐留に関して、日米間に締結せられた条約(であり)・・・平和条約がわが国に主権国として集団的安全保障取極を締結する権利を有することを承認(し)・・・国際連合憲章がすべての国が個別的および集団的自衛の固有の権利を有することを承認(している)
・・・武力攻撃を阻止するため、わが国はアメリカ合衆国がわが国内およびその附近にその軍隊を配備する権利を許容する・・・安全保障条約は、その内容において、主権国としてのわが国の平和と安全、ひいてはわが国存立の基礎に極めて重大な関係を有するもの・・・
安全保障条約は、・・・主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものというべき(で)・・・違憲なりや否やの法的判断は、純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のもの(であり)・・・
一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであつて、それは第一次的には、右条約の締結権を有する内閣およびこれに対して承認権を有する国会の判断に従うべく、終局的には、主権を有する国民の政治的批判に委ねらるべきもの(である)・・・
・・・(が)アメリカ合衆国軍隊の駐留は、憲法九条、九八条二項および前文の趣旨に適合こそすれ、これらの条章に反して違憲無効であることが一見極めて明白であるとは、到底認められない(のである)・・・全文は長いので、全てを張り付けることはしない。
が、この文を読むと、おかしなことに気がつく。
そのせいか、この判決には、判事のよる膨大な量の「補足意見」が、ついている。それは、判決文の7倍に相当する。
ただし、明確な『反対意見』は、ない。(この判決は、全員が、賛成した)
Ⅳ) 「田中判決」は、論理的に破たんした、判決である
なぜ、このような多くの補足意見が付けられたのであろうか。
それは、この判決文が、「まともな」判決文になっていないからである。
それは、次のことでもわかる。
① 安全保障条約は、司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のもである。
だから、違憲の審査はしない。
② そして、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のもの、である。
③ このように述べながら、今度は、アメリカ合衆国軍隊の駐留は、違憲無効であることが、一見極めて明白であるとは、到底認められない、というのである。
判決文は、このように述べている。
さらに、整理する。
①では、「審査」をしない、といっている。(否定)
ところが、②では、審査には、「判断」が必要である、という。(留保)
③では、違憲無効ではない、という「判断」をしている。(肯定)
つまり、この判決文は、論理が一貫していない。
論理的に破たんした、判決文である、と断定できる。
だから、多くの「補足意見」(言い訳)が必要であった、と思う。
結論的に言えば、自民党が、この判決文を持ち出すのは、戦略的に観て「誤り」であろう。
この「田中判決」をもって、今回の安保法制案を正当化すれば、最後には、「破たん」をきたすことになろう。
※
*各裁判官による「補足意見」は、興味ある内容を含む。
そして、実は、この「補足意見」のほうが、審査をした裁判官の考えをよく表している。
だが、今は、記事が長くなってきているし、それを検討する時間もない。
それについては、近いうちに記事にしたい。
*今現在(11時30分)、衆議院の安保法制案の審議は、民主党が出席を拒否したことで、審議が止まったままである(実際には、「時計」は進められているが)。
それを見ながら、作成した。
(関連サイト案内)
⇒最高裁長官「一審は誤り」 砂川事件、米大使に破棄を示唆=47ニュース
(2015年6月12日)