未明の「騒乱劇」であった。
山本太郎議員に対し、山崎議長が厳重注意をしたことが、ネットをにぎわしている。だが、私は、参議院の品位を汚した責任は、鴻池委員長や、山崎議長にある、と思っている。
「騒乱」というのは、決して、大げさな表現ではない。国会の外は、まさに「騒乱」にそなえるかのような「警戒(=警備)」ぶりであったのだから。
最近になって、「日本会議」の名前を目にするようになってきた。これは、安倍政権の閣僚の中にそのメンバーが、大勢入っているせいもあるのかもしれない。山本議員を「注意した」山崎正昭議長も、そのメンバーである。
「日本会議」については、各自で検索して頂くとして、≪山本太郎氏を厳重注意=参院議長≫の件についてのみ、感想を述べてみたい。
◆ 与党である自民・公明党の議員の行動こそ、「厳重注意」すべき
山崎議長が、山本議員を「脅す根拠」になっているのは、憲法第58条の「両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。」という規定である。
ここにある通り確かに、今の国会の状況では、それは可能だ。次世代、改革、未来も、賛成にまわるであろうから、「盤石」だ。
『共同通信』の記事は、次のように報じている。
≪山崎正昭参院議長は25日、山本太郎参院議員(生活の党と山本太郎となかまたち)を議長室に呼び、安全保障関連法の採決に先立つ本会議で喪服を着て安倍晋三首相らに焼香するしぐさをしたことを厳重注意した。 議長は「次は容赦しない。議員バッジを外すことになるかもしれない」と述べ、国会法に基づく除名をちらつかせて警告した。≫これは、「ヤクザ」の脅しより、性質(たち)が悪い。それ以上で、ヤクザも逃げ出すほどの「脅し方」である。
だが、数の上において、野党をはるかにしのぐ与党が、参議院の委員会において、あのような「形で決着」をつけたことこそ、国会の品位を貶める行為ではないのか。
国会の品位を貶める、「最大の愚行」ではないのか。山本議員の態度を責めるなら、同様に、あの時の「与党議員らの暴挙」も、厳重に注意すべきである。
もし、それをしないのであれば、この「厳重注意」は、たんなる、「言いがかり」である。しかも、肝心な事は、国民の多くは、山本議員の行動より、与党である自民・公明党の議員の行動にこそ、「不信感」を持っている。「不快感」を、表明している。
このことである。
◆ 安倍首相の意向を斟酌して、「若い議員ら」が暴走
与党は、衆議院に続いて、参議院でも、委員会の審議において「強行採決」をおこなった。しかも、多くの国民が、「まだ、十分に説明は尽くされていない」として、「反対の意思」を表明する中において、それを実行した。
あの委員会の状況を見て、「正常な国会運営がなされた」と思う国民は、安保法案に賛成の国民の中でさえ、そう多くはないであろう。
あの行動に出たのは、何が何でも、「連休前に議決したい」、という「安倍首相の思い」の結果だろう。もし、連休を挟めば、国会前の「デモ」は、収拾のつかないほど、大規模なものになっていた。
そのことを恐れてのことであろう。そうなれば、会期内において、採決することが難しくなる。そうなれば、安倍首相が、米国の議会で行った演説の時の「約束」を、果たせなくなる。
それを恐れてのことであろう。「あろう」というより、そうに違いない。そうなれば、安倍首相は、オバマ政権の信頼を裏切ることになる。今後は、「無用の存在」として、「政界を追放」という「仕打ち」を受ける事になるかもしれない。
この「恐怖感」が、あの行動をとらせたのだと思う。もちろん、それを安倍首相が実行するように「指令を出した」、という証拠はない。むしろ、安倍首相の意向を斟酌して、「若い議員ら」が、暴走した。
そう、考えることも出来るし、それが真実に近いのかもしれない。
◆ 責任は、鴻池委員長、山崎議長にある
どちらにしても、与党の行為が、山本議員の行動を「誘発」した。このことは、「間違い」のないところだ。従って、最も責められるべきは、与党議員らの「暴走」行為である。
しかも、あの委員会での、「佐藤正久議員のパンチ」は、世界中に発信され、拡散された。このことこそ、問うべきだ。あの画像が、世界に与えた「インパクト」は、計り知れないものがある。
佐藤議員は、元自衛隊員である。イラクに派遣された。その顔は、世界中に知れ渡っている。その彼が、「戦争法案」と呼ばれている法案の議決に際して、あのような行動をとった。
今後は、あの「切り取られた写真」だけが、世界中を「一人歩き」をすることになるのである。そのことの「重み」を考えれば、山本議員の取った行動など、「蟷螂の斧」程度のことである。
その行動をもって、「除名」をチラつかせて「脅す」など、言語道断の行いである。むしろ、山崎議長こそ、「除名」すべきだ。
今回の安保法案の審議において、国会の、参議院の、「権威や「品位」を貶めた「A級戦」は、山崎議長そのひとである。
参議院の委員会の「強行採決」の責任は、鴻池委員長だけにあるのではない。山崎議長にも、「鴻池委員長をしっかり監督しなかった」という意味において、大きな責任がある。
大半の国民は、この事実を、けっして忘れることをしないであろう。
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(2015年9月26日)