原発再稼働のリスクの3回目と入して、「アーミテージ報告書」との関連について、検討してみます。
以前にも取り上げたことであるが、自民党の細田幹事長代理が、テレビ番組において、「世界の潮流は原発推進」であり、さらに付け加えて「原発事故の不幸があるから全部やめてしまうという議論は、耐え難い苦痛を将来の日本国民に与える」とも述べた。
しかしこの言葉は、実は日本の国民のことを思っての発言ではなかったのではないか、と思われるフシがある。
それは、イラク戦争当時のアメリカの副大統領を務めたアーミテージ氏による「アーミテージ報告という文書」の存在である。
それは2012年10月に出されたものである。
その中に、次のような文章がある。
事故後の大飯原発の再稼働について、
日本は、原子炉の徹底的な調査と原子力保安規定の改定を行なっている。原子力に対する一般市民の強い反対にも関わらず、野田佳彦首相の政府は、2基の原子炉の再稼動を開始した。さらなる再稼動は、安全性の確認と地元の合意に依存する。我々の見解では、このような状況において原子力発電を慎重に再開することは責任ある正しい措置である。
(と考える)、と述べている。
大飯原発の再稼働は、アメリカの要求でもあったのだ。
単に電力の不足が原因ではない、証拠といえる。
報告書はさらに、つづけていう。
米国では、政策が定まらないこと、経済環境が不利に働いていること(天然ガスの価格下落を主因とする)、また米韓原子力協力協定(123 agreement)が更新されていないことが、原子力エネルギー・セクターの足かせとなっている。今こそ、世界の原子力発電の基準を策定するために、日韓両国の政府がさらに大きな役割を担う絶好の機会である。現体制の将来を確かなものにするためには、日本が再び安全な原子力エネルギーに取り組むこと、そして韓国が世界的な原子力エネルギー供給国として最高水準の透明性確保と拡散防止に取り組むことが不可欠になる。
前段では、アメリカの原発の状況が思わしくないことを述べ、後段で、その代りを日韓両国に肩代わりせよ、と述べる。
実際にアメリカでは、1974年以後に発注された原発は一基も完成していない。
1970年のはじめ、ニクソン大統領は2000年には、「1000基の原発が建設され、電力の半分が原子力でまかなわれるだろう」とのべていた。(1)
しかし、アメリカの原発の設備容量は、1990年からほぼ横ばいである。
そして現在、アメリカの原発の稼働率は、2000年には80%であったのが、2011年には40%に半減している。(2)
報告書のいうことー「世界の原子力発電の基準を策定する」ことーがどういう意味であるのか分らないが、アメリカに代わって日韓両国に、世界の工場―世界的な原子力の供給国ーになれ、と命令しているのである。
現在韓国では23基の原発があり,6期が停止中。
2010から2021年にかけて,12基を増設予定。
2030年までに80基を輸出する予定である、とされる。(「ウィキペディア」より)
しかしその韓国の原発であるが、先日、産経ニュースが偽装部品問題について報じた。
中国の新華社日本語経済ニュース(電子版)によると、韓国で過去10年間、原発建設の
ために仕入れられた部品のうち1万900点超の品質合格証書が偽造された疑いがある。
があり、日本とは「異次元の電力危機にある」と記事は述べている。
だから韓国でも過酷事故の可能性が出てきている。
対岸の火事と見過ごせることではない。
月城には4基,古里には9基(5基は試験運転中)の原発がある。
そしてその目と鼻の先の、日本の玄海原発には、4基の発電設備がある。わずかに100キロの距離である。
一基でも何かあれば、連鎖反応的に、波及していく。
日本までは届かないと、安心してはおれまい。
「アーミテージ報告書」は私的なシンクタンクの報告書ではあるが、元副大統領が運営するものだ。
絶大な影響を持つものと言えるだろう。
その報告書が、日本に対して原発の再稼働をもとめているのである。
安部政権が、果たしてそれを無視できるであろうか。危ういものである。
安部首相は日米同盟の一層の強化を望んでいる。
集団的自衛権を行使できるようにして、アメリカとその歩調を合わせようとしている。
こんな時にアメリカの要求をはねつけることは出来まい。
原発再稼働は、日米同盟の一環でもあるとすれば、それは日本独自の事情によるものではないことは、明白である。
安倍首相や東電や財界が再稼働をあくまでも強行しようとするのは、アメリカの意向に沿う必要からである、といえる。
≪サイト、文献案内≫
(1) アーミテージ報告書 【IWJブログ】より 報告書の翻訳を利用させて頂きました。
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/56226
(2) 「脱原子力社会へ」 長谷川公一著 岩波新書 2011年9月 刊
(3) 日本原子力産業協会 「世界の原子力発電の動向」 2013年7月 の報告書より
http://www.jaif.or.jp/ja/joho/press-kit_world_npp.pdf
(2013年8月13日)
以前にも取り上げたことであるが、自民党の細田幹事長代理が、テレビ番組において、「世界の潮流は原発推進」であり、さらに付け加えて「原発事故の不幸があるから全部やめてしまうという議論は、耐え難い苦痛を将来の日本国民に与える」とも述べた。
しかしこの言葉は、実は日本の国民のことを思っての発言ではなかったのではないか、と思われるフシがある。
それは、イラク戦争当時のアメリカの副大統領を務めたアーミテージ氏による「アーミテージ報告という文書」の存在である。
それは2012年10月に出されたものである。
その中に、次のような文章がある。
事故後の大飯原発の再稼働について、
日本は、原子炉の徹底的な調査と原子力保安規定の改定を行なっている。原子力に対する一般市民の強い反対にも関わらず、野田佳彦首相の政府は、2基の原子炉の再稼動を開始した。さらなる再稼動は、安全性の確認と地元の合意に依存する。我々の見解では、このような状況において原子力発電を慎重に再開することは責任ある正しい措置である。
(と考える)、と述べている。
大飯原発の再稼働は、アメリカの要求でもあったのだ。
単に電力の不足が原因ではない、証拠といえる。
報告書はさらに、つづけていう。
米国では、政策が定まらないこと、経済環境が不利に働いていること(天然ガスの価格下落を主因とする)、また米韓原子力協力協定(123 agreement)が更新されていないことが、原子力エネルギー・セクターの足かせとなっている。今こそ、世界の原子力発電の基準を策定するために、日韓両国の政府がさらに大きな役割を担う絶好の機会である。現体制の将来を確かなものにするためには、日本が再び安全な原子力エネルギーに取り組むこと、そして韓国が世界的な原子力エネルギー供給国として最高水準の透明性確保と拡散防止に取り組むことが不可欠になる。
前段では、アメリカの原発の状況が思わしくないことを述べ、後段で、その代りを日韓両国に肩代わりせよ、と述べる。
実際にアメリカでは、1974年以後に発注された原発は一基も完成していない。
1970年のはじめ、ニクソン大統領は2000年には、「1000基の原発が建設され、電力の半分が原子力でまかなわれるだろう」とのべていた。(1)
しかし、アメリカの原発の設備容量は、1990年からほぼ横ばいである。
そして現在、アメリカの原発の稼働率は、2000年には80%であったのが、2011年には40%に半減している。(2)
報告書のいうことー「世界の原子力発電の基準を策定する」ことーがどういう意味であるのか分らないが、アメリカに代わって日韓両国に、世界の工場―世界的な原子力の供給国ーになれ、と命令しているのである。
現在韓国では23基の原発があり,6期が停止中。
2010から2021年にかけて,12基を増設予定。
2030年までに80基を輸出する予定である、とされる。(「ウィキペディア」より)
しかしその韓国の原発であるが、先日、産経ニュースが偽装部品問題について報じた。
中国の新華社日本語経済ニュース(電子版)によると、韓国で過去10年間、原発建設の
ために仕入れられた部品のうち1万900点超の品質合格証書が偽造された疑いがある。
があり、日本とは「異次元の電力危機にある」と記事は述べている。
だから韓国でも過酷事故の可能性が出てきている。
対岸の火事と見過ごせることではない。
月城には4基,古里には9基(5基は試験運転中)の原発がある。
そしてその目と鼻の先の、日本の玄海原発には、4基の発電設備がある。わずかに100キロの距離である。
一基でも何かあれば、連鎖反応的に、波及していく。
日本までは届かないと、安心してはおれまい。
「アーミテージ報告書」は私的なシンクタンクの報告書ではあるが、元副大統領が運営するものだ。
絶大な影響を持つものと言えるだろう。
その報告書が、日本に対して原発の再稼働をもとめているのである。
安部政権が、果たしてそれを無視できるであろうか。危ういものである。
安部首相は日米同盟の一層の強化を望んでいる。
集団的自衛権を行使できるようにして、アメリカとその歩調を合わせようとしている。
こんな時にアメリカの要求をはねつけることは出来まい。
原発再稼働は、日米同盟の一環でもあるとすれば、それは日本独自の事情によるものではないことは、明白である。
安倍首相や東電や財界が再稼働をあくまでも強行しようとするのは、アメリカの意向に沿う必要からである、といえる。
≪サイト、文献案内≫
(1) アーミテージ報告書 【IWJブログ】より 報告書の翻訳を利用させて頂きました。
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/56226
(2) 「脱原子力社会へ」 長谷川公一著 岩波新書 2011年9月 刊
(3) 日本原子力産業協会 「世界の原子力発電の動向」 2013年7月 の報告書より
http://www.jaif.or.jp/ja/joho/press-kit_world_npp.pdf
(2013年8月13日)