「安倍晋三首相はスイスで22日夕(日本時間23日未明)に行う世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)の基調講演で、「不可能を可能にした」と経済政策「アベノミクス」による改革姿勢をアピールする。24日召集の通常国会を目前にした窮屈な日程の中、首相は自らの強い意向で出席を決めた。政権運営の命運を握る成長戦略を軌道に乗せるため、世界の投資を呼び込みたいとの思いからだった」
と産経ニュースが伝えました。(2014/1/23)
この矢で、何を実現したというのでしょうか。
昨年の動きを追ってみます。
その際には、北海道新聞の社説(12月25日)が、参考になります。
社説は次のように言います。
「きのう閣議決定された14年度政府予算案は、一般会計の総額が過去最大の95兆9千億円に達した。
中でも目立つのが公共事業費の膨張だ。道路、港湾などへのばらまきが横行し、かつての自民党政権に先祖返りしたかのようだ」
一方で、国債の方は、
「新規国債の発行額は13年度より減ったとはいえ、依然、41兆3千億円に上る。借換債の増大で発行総額は181兆円と過去最大に膨れ上がり、健全化にはほど遠い」
状況である、と記事は言う。
約96兆円のうち、41兆円を超す分が、国債で賄われる予定です。
家計で言えば、「稼ぎと同じぐらいの額」を借りることになるのです。
しかも41兆3千億円のほかに、140兆円もの国債が、「借り換え」のために発行されます。
「借りた国債の返す」ために、また新たに「借金」をするのです。
社説の記事が言うように「健全化には程遠い」どころの話ではありません。
これでも、安倍首相は「不可能を可能にした」というのでしょうか。笑止です。
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「アベノミクス」が成功したと言われる中で、国民の生活は、円安で大きな打撃を受けています。
ガソリン、食料品、電気料金などの値上げが、国民の暮らしを圧迫しています。
「日本チェーンストア協会が21日発表した2013年の全国スーパー売上高は、既存店ベースで前年比0・7%減となり、17年連続で前年水準を下回った。アベノミクスを背景に年央以降は食料品が好調で明るい兆しもみられたが、衣料品の不振が響き、全体ではマイナスになった」
一方で、
「日本百貨店協会が17日発表した2013年の全国百貨店売上高は、店舗数を調整していない全店ベースで前年比1・2%増となり、16年ぶりに前年実績を上回った。都市部を中心に高額品の販売が好調で、店舗が減る中で全体の市場規模は拡大した。前年と比較可能な店舗を抽出した既存店ベースでも1・6%増と2年連続のプラス」
となっており、国民の間の格差が、大きくなっていることをうかがわせます。
食糧費が増えるのは当然です。
むしろ「増えている」ということは、せめて「食べるものぐらいという気持ちの表れ」と見るべきでしょう。
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昨年には、消費税が8パーセントに増税されることが決まりました。さらに、10パーセントにするかどうかが、マスコミの話題になっています。
また、「年金や介護保険の負担増・給付減」、生活保護法の「改正」による保護申請の審査の厳
格化など、国民生活の負担は増える一方です。
さらには、派遣労働者の雇用の形態も、変えたいようです。
「厚労省は12日、労働者派遣制度の見直しに関し、企業にとって現在最長3年となっている派遣受け入れ期間の上限を廃止し、3年ごとに労働者を入れ替えれば、同じ職場で継続的に派遣を利用し続けることができるとする報告書の骨子案を労働政策審議会の部会に示した」
と47ニュースが報じています。(2013/12/12)
これでは、増々労働者は、不利な条件での雇用に甘んじなければならなくなでしょう。
昨年から始まった、TPPの交渉如何では、農業や医療、生命保険、学校教育などへの影響は避けられないでしょう。
この事も大きな懸念材料です。
日本は軍事だけでなく、「経済や国民の生活全般」までもが、「米国に支配」されることになりそうな気配です。
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安倍首相は「アベノミクス」と言って「胸を張っている」ようであるが、私には首相が本当に経済が分っているとは、到底思えません。
「経済」とは、「経世済民」のことです。
国を経(おさ)め、民を済(すく)うことです。
「経済」はあくまで国民の暮らしを豊かにし、守るためのものです。
国や企業だけが、資産を増やし、潤っても、国民の側が満足のいく生活を送れないようでは、何のための「アベノミクス」か解りません。
首相に「経済が分っていない」という所以です。
≪参考にしたサイト≫
(産経ニュースの記事)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140123/plc14012307470001-n1.htm
(北海道新聞の社説)
(47ニュースの記事)
≪参考文献≫
「略奪大国」 ジェームス・スキナー著 フォレスト出版
「田中角栄の遺言」 小室直樹 クレスト社
(加筆 2014/1/23 21:17)
(追加 2014/1/24)
尚、予算には特別会計があります。
また、これは「外貨保有高」とも関係します。
これについては、以下のサイトを参考にしてください。
少し前の記事ですが、今日でも事情は変わっていないと思われ