日本軍の失敗を組織的に分析した、戸部、野中他「失敗の本質」を要約して、
小室直樹は次のように言う。
「断定は避けていものの、組織的特性は、日本軍も戦後の組織も同じらしい。
日本軍の失敗の教訓は、現代の組織にも生かせる。
日本軍の組織的特性は現代の組織にも継承されている。
そしてその本質的な同じ失敗とは、 不確実な状況において、組織が有効に機能しなくなることである。
それは「危機管理不能症」である」と。(1)
この事は、東日本大震災による福島の原発事故により、見事に証明された。
日本政府の「内閣危機管理室」や、原子力安全委員会、そして超一流企業といわれる「東電」も、全く正常には機能しなかった。
官邸に上がってくる情報が錯そうしているなか、何を思ったのか、管首相は官邸を離れて、現場へ急行している。
他方で、危機管理室は、正確な情報を得ることが出来ず、枝野官房長官の記者会見での発言は次々と、変わった。
3月11日午後7時45分に記者会見したときは、
「放射性っ質の施設外の外部への影響は確認されておらず,対象区域内の居住者、滞在者は現時点ではただちに特別な行動を起こす必要はございません」
放射能が漏れないように、「しっかりとした対応をすることによって、万全の措置をとっているところでございます・・・・最悪の事態に備えた場合も万全を期す」、と発表した。
しかしそれは、回を追うごとに,事故の深刻さを表すものになっていった。
その後の経過は、ご存じの通りである。
安全委員会の班目委員長も初めは「爆発はありません」といいきり、爆発を予想することが出来なかった。
そして、爆発の後はなすすべがなく茫然とするだけであった、という。
東電の武藤社長が旅行先の奈良から本社に戻ったのは、地震から約19時間後であった。
初めから最後までヘリコプターを使い通しにせずに、その途中で、都内の渋滞の中を車で移動したりしている。
事故の際の対応の状況(公開された東電のテレビ会議)は、とても正視出来るものではなかった。
混乱のきわみであった。
組織が機能しない見本のようなテレビ会議であった。
公開されたものであの状態であったのなら、事実はもっと深刻なものであった、と思われる。
新聞社,TVは、いち早く現場から撤退し、あとは政府の情報を流すだけで、そのために多くの人々が、逃げ遅れ被ばくした。
その後も、政府の決めた暫定基準などを無批判に流すだけで、国民の生命を危機にさらした。(2)「そして直ちに影響はありません」と今でもことあるごとに、報道し続けている。
日本社会の組織的特性は、別個の存在である、機能集団と共同体がそれぞれの役目を果たしていないことにあり、会社のような機能集団が共同体になってしまっているところに問題がある、と小室直樹は指摘する。
そして共同体となった会社が、「ウチ」と「ソト」の二重規範を持ち、「ウチ」の規範が優先されてしまう。
それを公害に例をとって説明されている。
この場合も、この度の東電の対応は、この事を証明した。
東電はいまだに事故の事実を全面的に開示していない。
「無主物は引き取らない」と言ったかと思うと、先日見つかった飛散した「放射性物質」を受け取った。
どのような物質が含まれていたのか、いまだに公開していない。
最近採取された井戸における高濃度の汚染水についても、原因は分らないとしている。
全電源の喪失は、地震の際の津波によるものである、と言い続けている。
専門家の中には、地震で壊れたのではないかとの指摘もある。
内実をよく承知している東電の社員は「ウチ」の規範を守り、だれ一人として、事実を内部告発しようとはしない。
国民が死のうが病気にかかろうが、そんなことはかまっておれない。
一刻も早く原発を再稼働するためには、国民などどうでもよい。
一日でも早く会社を再生させることこそ、一番大切なことである。
そのためには、口をつぐんで「墓場まで持っていく」覚悟である。
このように考えているとしか思えない。
神戸の震災の時の、村山首相の対応は話にならない。
地震の知らせを聞いた翌日、翌々日も、その後の予定を変えず、食事会をしていた。
「自衛隊の出動の許可」を出すのを渋り、そのために多くの命が失われた。(3
小室直樹によると、危機に際して現場にいないと言うのが、日本の外務省の伝統らしい。
今回は危機に際して、現場にいても何もできないのが、日本の組織の本質的な欠陥であることが世界に露呈してしまった。
日本が国防軍を作ろうが、最新の戦闘機、その他の武器を持とうが、「他国の指導者や国民は心配する必要がない」であろう。
日本は安全保障上最も大切なことが出来ない国家であることが、福島の原発事故で、世界に証明された。
これ以上の売国的な行いがほかにあるであろうか。
参考書
(1) 「日米の悲劇」 小室直樹 光文社
(2) 「官邸の100時間」 木村英昭 岩波書店
(3) 「原発と陰謀」 池田整治 講談社
小室直樹は次のように言う。
「断定は避けていものの、組織的特性は、日本軍も戦後の組織も同じらしい。
日本軍の失敗の教訓は、現代の組織にも生かせる。
日本軍の組織的特性は現代の組織にも継承されている。
そしてその本質的な同じ失敗とは、 不確実な状況において、組織が有効に機能しなくなることである。
それは「危機管理不能症」である」と。(1)
この事は、東日本大震災による福島の原発事故により、見事に証明された。
日本政府の「内閣危機管理室」や、原子力安全委員会、そして超一流企業といわれる「東電」も、全く正常には機能しなかった。
官邸に上がってくる情報が錯そうしているなか、何を思ったのか、管首相は官邸を離れて、現場へ急行している。
他方で、危機管理室は、正確な情報を得ることが出来ず、枝野官房長官の記者会見での発言は次々と、変わった。
3月11日午後7時45分に記者会見したときは、
「放射性っ質の施設外の外部への影響は確認されておらず,対象区域内の居住者、滞在者は現時点ではただちに特別な行動を起こす必要はございません」
放射能が漏れないように、「しっかりとした対応をすることによって、万全の措置をとっているところでございます・・・・最悪の事態に備えた場合も万全を期す」、と発表した。
しかしそれは、回を追うごとに,事故の深刻さを表すものになっていった。
その後の経過は、ご存じの通りである。
安全委員会の班目委員長も初めは「爆発はありません」といいきり、爆発を予想することが出来なかった。
そして、爆発の後はなすすべがなく茫然とするだけであった、という。
東電の武藤社長が旅行先の奈良から本社に戻ったのは、地震から約19時間後であった。
初めから最後までヘリコプターを使い通しにせずに、その途中で、都内の渋滞の中を車で移動したりしている。
事故の際の対応の状況(公開された東電のテレビ会議)は、とても正視出来るものではなかった。
混乱のきわみであった。
組織が機能しない見本のようなテレビ会議であった。
公開されたものであの状態であったのなら、事実はもっと深刻なものであった、と思われる。
新聞社,TVは、いち早く現場から撤退し、あとは政府の情報を流すだけで、そのために多くの人々が、逃げ遅れ被ばくした。
その後も、政府の決めた暫定基準などを無批判に流すだけで、国民の生命を危機にさらした。(2)「そして直ちに影響はありません」と今でもことあるごとに、報道し続けている。
日本社会の組織的特性は、別個の存在である、機能集団と共同体がそれぞれの役目を果たしていないことにあり、会社のような機能集団が共同体になってしまっているところに問題がある、と小室直樹は指摘する。
そして共同体となった会社が、「ウチ」と「ソト」の二重規範を持ち、「ウチ」の規範が優先されてしまう。
それを公害に例をとって説明されている。
この場合も、この度の東電の対応は、この事を証明した。
東電はいまだに事故の事実を全面的に開示していない。
「無主物は引き取らない」と言ったかと思うと、先日見つかった飛散した「放射性物質」を受け取った。
どのような物質が含まれていたのか、いまだに公開していない。
最近採取された井戸における高濃度の汚染水についても、原因は分らないとしている。
全電源の喪失は、地震の際の津波によるものである、と言い続けている。
専門家の中には、地震で壊れたのではないかとの指摘もある。
内実をよく承知している東電の社員は「ウチ」の規範を守り、だれ一人として、事実を内部告発しようとはしない。
国民が死のうが病気にかかろうが、そんなことはかまっておれない。
一刻も早く原発を再稼働するためには、国民などどうでもよい。
一日でも早く会社を再生させることこそ、一番大切なことである。
そのためには、口をつぐんで「墓場まで持っていく」覚悟である。
このように考えているとしか思えない。
神戸の震災の時の、村山首相の対応は話にならない。
地震の知らせを聞いた翌日、翌々日も、その後の予定を変えず、食事会をしていた。
「自衛隊の出動の許可」を出すのを渋り、そのために多くの命が失われた。(3
小室直樹によると、危機に際して現場にいないと言うのが、日本の外務省の伝統らしい。
今回は危機に際して、現場にいても何もできないのが、日本の組織の本質的な欠陥であることが世界に露呈してしまった。
日本が国防軍を作ろうが、最新の戦闘機、その他の武器を持とうが、「他国の指導者や国民は心配する必要がない」であろう。
日本は安全保障上最も大切なことが出来ない国家であることが、福島の原発事故で、世界に証明された。
これ以上の売国的な行いがほかにあるであろうか。
参考書
(1) 「日米の悲劇」 小室直樹 光文社
(2) 「官邸の100時間」 木村英昭 岩波書店
(3) 「原発と陰謀」 池田整治 講談社