今こそ、NHKは、国民に資する公共放送局であることの信頼を取り戻す絶好の機会である。
マスコミが連日記事にしているように、国会で安倍内閣が提出した、安保法制案の審議が始まった。ところが、NHKは、この審議が始まった26日の、衆議院本会議の中継をしなかった。このことに関して、朝日新聞が記事を載せた。それによると、NHK広報局は、必ず中継するのは、施政方針演説などの政府演説。それに関する代表質問というのが原則。原則外のものはケース・バイ・ケースで対応している、と説明したという。
・NHK、安保法案の国会審議を中継せず
◆ ネット時代でも、NHKが、国会の審議を中継することの意義は、なくなっていない
ところで、放送法は、その第3章において、「日本放送協会」という章を設けている。
そこで、第十五条は、「目的」として、以下のように規定する。
協会は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送(国内放送である基幹放送をいう。以下同じ。)を行うとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い、あわせて国際放送及び協会国際衛星放送を行うことを目的とする。今日、国会審議は、「衆議院インターネット審議中継」というサイトがあり、パソコンを使えば、いつでも見ることが出来る。
だが、IT立国という掛け声のもと、はたして、どれだけ一般の国民に普及しているだろうか。
総務省の統計では、65歳以上の国民では、60%前後までしか、普及していない。(平成25年度の統計)
この統計をみると、まだまだ、パソコンをつかって、インターネットに接続することは、難しい状況にあると思う。
だから、NHKが、国会の審議を中継することの意義は、まだまだ、なくなってはいないだろう。
◆ NHKは、全ての審議に関して、中継すべきである
上に示したように、放送法は、「(日本放送)協会は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組」を提供しなければならないと、規定している。
今回安倍首相が行おうとしている、集団的自衛権の行使に関する法案の審議は、重要である。
それは、日本の今後の進路を大きく、転換するものである。
日本の国民にとっては、大変重要な法案の審議だ。
だから、今回のNHKの取った措置は、放送法の趣旨からして、適切ではない。
記事によると、27日の特別委員会は、関心が高いので中継するという。
今回の法案の国民にとっての重要性を考えれば、27日に審議に限らず、全ての審議に関して、中継すべきである、と思う。
この審議の中継にまさる、NHKが放送すべき内容があるとは、到底思えない。
もし、これが出来ないのであれば、「国民の皆様のNHK」というのは、単なる看板にすぎない、ということになろう。
◆ 安保法制の審議を置いて、ほかの番組を放送するのなら、NHKは、公共放送の名に値しない
このことは、たんにこの法案の「重要さだけ」を理由に言うわけではない。
今、この記事は、その国会中継(インターネットを使って)を見ながら、書いている。
質問者は、パネルを使い国民にも、より解りやすく説明しようという意識が感じられる。
これは、今日の委員会審議をNHKが、中継しているからであろう。
NHKが中継し、日本全国に放送することは、それだけで、これだけの緊張感をうみだす。
質問者も、答弁するほうも、それは同じであろう。
その意味でも、この審議に関しては、NHKが、そのすべての審議について、中継するべきである、と思う。
冒頭に張り付けたような国会議員の姿は、言語道断であるが(委員会ではこのような姿を見ることはないと思う。)、なによりも、どのようなことを審議したのかと、いうことを知るためにも、ぜひ、必要なことである。
さらに、答弁者、特に安倍首相や中谷防衛相の答弁する姿を、じかに目にすることは、大変重要である。
中継があれば、どういう内容について、どういう形で答弁しているかという姿を、全て見れる。
ただひたすらに、答弁書を読み上げるのは、どういうときか。
それで、安倍首相や中谷防衛相が、彼らが提案者であるこの法案を、どの程度、把握しているのかを知ることができる。
さらに、国会の審議とは、いかなる形式で行われるのか、という事も、つぶさに知ることができる。
だから、この安保法制案をNHKが中継することは、大変意味がある。
もし、NHKが、この法案より、ほかの内容の番組に放送するのなら、もはや、NHKは、公共放送の名に値しない。
そう思う。
(2015年5月28日)