日本経済新聞社とテレビ東京による世論調査で、集団的自衛権の行使を可能にする、安保法制案について、今国会での成立に「賛成」が25%と、4月の前回調査から4ポイント低下した、と伝えている。
そんな中で、安倍政権内から、重大な発言がつづいている。こんな政権に、3要件による「歯止め」が厳格に守られるのか。安倍政権は、この国民の声を聴いて、安保法制案を取り下げるべきだ。
記事は、「反対」が55%と3ポイント上昇した。政府・与党は、今国会での法案成立を目指すが、慎重論の強さが、改めて浮き彫りになった、と書く。
・敵基地攻撃も許容―菅氏 海外での武力行使めぐり=47ニュース
ここ2、3日安倍政権内から集団的自衛権について、相次いで、重大な発言が出ている。
中谷元・防衛相、菅官房長官、安倍政権内の高官などである。
◆ 中谷防衛相が、他国の中で、基地攻撃することもあり得る、と述べた
中谷元・防衛相は、24日のNHK番組で、集団的自衛権に基づく自衛隊の武力行使について、他国の領域内で敵基地を攻撃することも可能だとの見解を示した。
一般に、海外派兵は禁じられている、としながらも、武力行使の新3要件に合致すれば、他国の中で、基地攻撃をすることもあり得る、と述べた。
・防衛相「敵基地攻撃も可能」 新3要件前提に =日本経済新聞
政府のこれまでの解釈は、日本を攻撃しようとしている敵基地への攻撃は、憲法上許される、というものであった。
これは、個別自衛権の範囲でのこと、という条件付きであった。
今回、中谷防衛相は、さらに踏み込んで、集団的自衛権を行使する場合でも認められるとの考えを示した、ことになる。
・海外派兵は禁じられている。
・武力行使の新3要件に合致すれば、他国の中で、基地攻撃をすることもあり得る。
中谷防衛相は、いったい、このふたつの命題のどこに、整合性を認めるというのであろうか。
「禁じられている」というのであれば、「それは出来ない」となるのが、合理的判断であろう。
それを「あり得る」と述べるのは、状況としてそういえるのであって、「あり得ない」というのが、正しいこたえであろう。
◆ 菅官房長官のミサイル発言
25日の記者会見で、他国領域での武力行使の例として、他国によるミサイル発射を防ぐための敵基地攻撃を取り上げて、説明した。
そして、武力行使の新3要件が満たされていれば、誘導弾等の基地をたたくことは、法律的には自衛の範囲に含まれ可能だ、とした。
・敵基地攻撃も許容―菅氏 海外での武力行使めぐり=47ニュース
これは、この22日の会見で、菅氏が述べた事を補足する発言であろう。
菅氏は、集団的自衛権の行使に関連して、「他国の領域における武力行動であって、新3要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としては、そのような行動をとることが許されないわけではない」と、述べた。
このことについては、昨日の記事での論じた。
今日は別の観点から、観てみたい。
それは、旧安保条約のことである。
◆ 旧安保条約と新安保条約の違い
旧安保条約は、その前文で、次のように言う。
だから、本来的には、日本の防衛は、米軍が行うべきものである、と規定されていた。
それは、日本国憲法を勘案すれば、当然のことである。
この時点において、旧安保条約と 日本国憲法の間に、齟齬(くいちがい)はない。(それでは、独立国とは言えない、という議論は、ここではしない。)
だが、それが、新(現)安保条約においては、第5条で、
それでも、まだ、この規定においても、「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」となっており、日本国憲法に反する行動はとれない。
仮に100歩ゆずって、行動がとれたとしても、「日本国の施政の下にある領域」という縛りがある。
もし、菅官房長官がどうしても、集団的自衛権の行使を言いたいのなら、まず、日本国憲法を改定するのが、順序である。
次に、この安保条約も、改定すべきである。
破棄の通告をどうするかは別としても、このようなあいまいな規定は、改定するほうがよい。
◆ 安倍政権は、即刻、安保法制案を取り下げるべきである
最後に、安倍政権内からの高官発言について。
北海道新聞が報じた。
先日の党首討論での、安倍首相の『ポツダム宣言」にたいする発言に関してのこと。
・ポツダム宣言「読んでいない」 首相発言、波紋 自身の歴史観、隠す意図か=北海道新聞
「馬鹿も休み休みに言え」と言いたくなる。
「正しい戦争ならやっていいのか」となどと、言えたものだ。
自分が何を言っているのか、分かっていっているのか。
この、政府高官は。
その「「正しい戦争」をしているのは、どこの国だ。
米国ではないか。
その米国と軍事同盟を結び、今回、さらなる支援をしていくために、憲法を踏みにじってまで、安保法制案をごり押ししようとしているのが、安倍政権ではないか。
良くこんなことが言えたものだ。
この世論調査の結果は、そのような安倍政権の傲慢さ、いい加減さ、欺瞞性に対する、日本国民の反対表明を代表するものだろう。
「正しい戦争ならやっていいのか」と猛反発するのなら、安倍政権は、即刻、安保法制案を取り下げるべきである。
(2015年5月25日)
そんな中で、安倍政権内から、重大な発言がつづいている。こんな政権に、3要件による「歯止め」が厳格に守られるのか。安倍政権は、この国民の声を聴いて、安保法制案を取り下げるべきだ。
記事は、「反対」が55%と3ポイント上昇した。政府・与党は、今国会での法案成立を目指すが、慎重論の強さが、改めて浮き彫りになった、と書く。
・敵基地攻撃も許容―菅氏 海外での武力行使めぐり=47ニュース
ここ2、3日安倍政権内から集団的自衛権について、相次いで、重大な発言が出ている。
中谷元・防衛相、菅官房長官、安倍政権内の高官などである。
◆ 中谷防衛相が、他国の中で、基地攻撃することもあり得る、と述べた
中谷元・防衛相は、24日のNHK番組で、集団的自衛権に基づく自衛隊の武力行使について、他国の領域内で敵基地を攻撃することも可能だとの見解を示した。
一般に、海外派兵は禁じられている、としながらも、武力行使の新3要件に合致すれば、他国の中で、基地攻撃をすることもあり得る、と述べた。
・防衛相「敵基地攻撃も可能」 新3要件前提に =日本経済新聞
政府のこれまでの解釈は、日本を攻撃しようとしている敵基地への攻撃は、憲法上許される、というものであった。
これは、個別自衛権の範囲でのこと、という条件付きであった。
今回、中谷防衛相は、さらに踏み込んで、集団的自衛権を行使する場合でも認められるとの考えを示した、ことになる。
・海外派兵は禁じられている。
・武力行使の新3要件に合致すれば、他国の中で、基地攻撃をすることもあり得る。
中谷防衛相は、いったい、このふたつの命題のどこに、整合性を認めるというのであろうか。
「禁じられている」というのであれば、「それは出来ない」となるのが、合理的判断であろう。
それを「あり得る」と述べるのは、状況としてそういえるのであって、「あり得ない」というのが、正しいこたえであろう。
◆ 菅官房長官のミサイル発言
25日の記者会見で、他国領域での武力行使の例として、他国によるミサイル発射を防ぐための敵基地攻撃を取り上げて、説明した。
そして、武力行使の新3要件が満たされていれば、誘導弾等の基地をたたくことは、法律的には自衛の範囲に含まれ可能だ、とした。
・敵基地攻撃も許容―菅氏 海外での武力行使めぐり=47ニュース
これは、この22日の会見で、菅氏が述べた事を補足する発言であろう。
菅氏は、集団的自衛権の行使に関連して、「他国の領域における武力行動であって、新3要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としては、そのような行動をとることが許されないわけではない」と、述べた。
このことについては、昨日の記事での論じた。
今日は別の観点から、観てみたい。
それは、旧安保条約のことである。
◆ 旧安保条約と新安保条約の違い
旧安保条約は、その前文で、次のように言う。
日本国は、本日連合国との平和条約に署名した。日本国は、武装を解除されているので、平和条約の効力発生の時において固有の自衛権を行使する有効な手段をもたない。・・・
これらの権利の行使として、日本国は、その防衛のための暫定措置として、日本国に対する武力攻撃を阻止するため日本国内及びその附近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを希望する。また、 第1条では、
平和条約及びこの条約の効力発生と同時に、アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍を日本国内及びその附近に配備する権利を、日本国は、許与し、アメリカ合衆国は、これを受諾する。
この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、並びに、一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じよう{前3文字強調}を鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる。と、書かれていた。
だから、本来的には、日本の防衛は、米軍が行うべきものである、と規定されていた。
それは、日本国憲法を勘案すれば、当然のことである。
この時点において、旧安保条約と 日本国憲法の間に、齟齬(くいちがい)はない。(それでは、独立国とは言えない、という議論は、ここではしない。)
だが、それが、新(現)安保条約においては、第5条で、
各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。という規定が、できた。
それでも、まだ、この規定においても、「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」となっており、日本国憲法に反する行動はとれない。
仮に100歩ゆずって、行動がとれたとしても、「日本国の施政の下にある領域」という縛りがある。
もし、菅官房長官がどうしても、集団的自衛権の行使を言いたいのなら、まず、日本国憲法を改定するのが、順序である。
次に、この安保条約も、改定すべきである。
破棄の通告をどうするかは別としても、このようなあいまいな規定は、改定するほうがよい。
◆ 安倍政権は、即刻、安保法制案を取り下げるべきである
最後に、安倍政権内からの高官発言について。
北海道新聞が報じた。
先日の党首討論での、安倍首相の『ポツダム宣言」にたいする発言に関してのこと。
首相は「つまびらかに読んでいないので、承知していないから論評は控えたい」と答弁するにとどまった。想定外の質問だったようで、政府高官は党首討論後「間違った戦争かという質問自体がおかしい。正しい戦争ならやっていいのか」と猛反発した。このように記事は、書いている。
・ポツダム宣言「読んでいない」 首相発言、波紋 自身の歴史観、隠す意図か=北海道新聞
「馬鹿も休み休みに言え」と言いたくなる。
「正しい戦争ならやっていいのか」となどと、言えたものだ。
自分が何を言っているのか、分かっていっているのか。
この、政府高官は。
その「「正しい戦争」をしているのは、どこの国だ。
米国ではないか。
その米国と軍事同盟を結び、今回、さらなる支援をしていくために、憲法を踏みにじってまで、安保法制案をごり押ししようとしているのが、安倍政権ではないか。
良くこんなことが言えたものだ。
この世論調査の結果は、そのような安倍政権の傲慢さ、いい加減さ、欺瞞性に対する、日本国民の反対表明を代表するものだろう。
「正しい戦争ならやっていいのか」と猛反発するのなら、安倍政権は、即刻、安保法制案を取り下げるべきである。
(2015年5月25日)