2014年5月31日土曜日

STAP細胞「騒動」考(4)理研の小保方氏への対処は、不公正。

この度のSTAP細胞「騒動」で、小保方氏が、理研や、大手マスコミ、ネットなどで、これほどまでに、たたかれている理由の一つに、「研究成果は誰のものか」ということ、があると思います。


私事ですが、昨年より、家の中の電球をLEDに交換してから、電気料金が、大幅に減りました。また、電器を何度も、ON、OFFする事も気になりません。

これが出来るようになったのは、中村修二教授の発明のおかげです。(注①)
そこで、中村修二教授の例を取り上げて、「研究成果は誰のものか」ということについて、考えてみたいと思います。

* 「中村=日亜化学」(勝手に、裁判名を付けました)裁判の経過

中村修二氏は、日亜化学工業に勤務していたとき、少ない研究費の中で、社長の了解を得て、自分独自のアイデアを用いて、苦労の末、高輝度青色発光ダイオードを、発明しました。

それは、産業界にとっても、最後の課題でした。
その、青色LEDを産みだしました。

ですが、会社側は、このノーベル賞級の発明に対し、報奨金2万円という額、で答えたのです。そこで、中村修二氏は、やむなく訴訟を起こしました。

  2004年1月30日に、東京地裁は、発明の対価の一部として、日亜化学工業対して、200億円を支払うよう命じました。(注②)

これに対し、日亜化学工業側が、東京高裁に控訴。

東京高裁は、2005年1月11日に、全関連特許などの対価などとして、日亜化
学工業側が約8億4000万円を中村に支払うこと、で和解が成立。

最終的には、中村氏側が折れて、東京地裁の判決とは違い、信じられないような額での、解決となりました。

* 企業における「研究成果は誰のものか」

All Aboutの、記事によると、
「特許法では、・・・第35条で・・・“従業者は、契約、勤務規則その他の定めにより、職務発明について使特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ、又は使用者のため専用実施設定したときは相当の対価の支払を受ける権利を有する”」(注③)

となっています。
つまり、企業における発明は、その企業だけに帰するものではなく、従業員
にも、「それなり」の権利がある、ということになります。

中村教授の発明に対する東京地裁の判決は、高裁で否決されたとはいえ、明確にそのことを証明するものです。(注④)

* 理研の行為は、小保方氏の成果の「ただ取り」である

ところで、理研は、

【(5月)8日、STAP細胞の論文を巡る問題で記者会見し、研究不正があったと認定した小保方晴子研究ユニットリーダーが申し立てていた再調査を実施しないと発表した。理研は小保方氏に論文の取り下げを勧告したほか、関係者の処分を決め・・・TAP細胞の論文に不正があったとした結論】(注⑤)
した、と報じられました。
これで、小保方氏の理研への復帰はないもの、となった、といえるでしょう。

ところが、その理研は、小保方氏の実験を否定しながらも、理研独自で、今後も研究を続ける、のだといっています。

記事は、次のように言っています。

【STAP細胞の存在を調べる再現実験は引き続き継続し、今後1年間かけて結論を得る。すでに出願したSTAP細胞の特許は当面は取り下げず、再現実験の結果をみて判断する】(注⑥)

これは、おかしくはないでしょうか。
小保方氏の実験に、誤りがあり、論文の取り下げを勧告するのは、「STAP細胞が存在しない」、と言うことを理研が認めた、ことになるのではないでしょうか。

その小保方氏に「不正があった」とし、「論文の取り下げ」を言いながら、理研独自で、再実験をするという。
特許の申請も取り下げない、という。

これは、大変、矛盾しています。
普通に考えれば、小保方氏の実験は、正しかった、ということになります。
正しいからこそ、再実験をし、特許の申請を取り下げない、のでしょう。

STAP細胞を見つけたのは、小保方氏です。  
そうだとすると、理研は、小保方氏の研究成果を、「ただ取り」(言葉は悪い
ですが)することになる、のではないでしょうか。

* 理研は、小保方氏を、指導し、擁護すべきであった

私は、小保方氏の論文に疑惑が持ち上がった時、理研はまず小保方氏に
事情を充分に確かめ、指導すべきであった、と思います。

その上で、もし「不正が認められた」のなら、内部で、まず、解決を図ることが先決であった、と思います。
理研のやり方は、まるで、小保方氏を外部の人間であるか、のような取り扱いでした。

その上で、記者会見などをして、外部に対し、説明を果たせばよかった、と
思います。

理研の一連の動きは、まったく、社会常識にも合わないもので、公正さを欠
くものである、といえるでしょう。 
          *         *         *

(注① ) 中村修二教授とは  wikipediaに記事による)

日亜化学工業に就職、開発課に配属される。現場の職人からガラスの曲げ方などを習い、自らの手で実験装置などの改造を行った。これらの経験が、CVD装置の改良に生かされ、後の発明につながる。

     日亜化学工業時代に商品化したものとしては、ガリウム系半導体ウェハーなどがあったが、ブランド力や知名度が低く、売れなかった。そこで、まだ実用化できていないものに取り組もうということで、青色発光ダイオード及び青色半導体レーザに挑戦することになった。当時の応用物理学会、研究会などではセレン系に注目が集まっていた。しかしながら、ガリウム系の研究会は人数も少なかった。あれだけ優秀な人たちが取り組んでもうまくいかないならば、むしろ終わったとされる分野に挑んだ方が良いということで、ガリウムに着目。やがて、窒化ガリウムを見いだし、高輝度青色発光ダイオードを開発した。

(注②、注③ ) All Aboutの 2004/2/10の記事より

中村修二氏の職務発明訴訟に高額判決出る! 青色LED訴訟、200億円の判決光の三原色(赤、緑、青)を発光するダイオードのうち、青色は最後の発光色としてその開発が凌ぎを削っていた。20世紀中の開発は困難とされていたが、日亜化学時代の中村氏は他社をリードして、この実用化に目処をつけたのである。・・・
この時の多くの発明は、職務発明として会社に譲渡されたとなっているが、当時の取扱いもあいまいであったこと、報奨金も2万円という額であり、ノーベル賞級の発明としては少なすぎることが争点になった。・・・

特許法では職務発明に対して第35条で次のように述べている。
“従業者は、契約、勤務規則その他の定により、職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ、又は使用者のため専用実施権を設定したときは、相当の対価の支払を受ける権利を有する”・・・

そして今回の発明はノーベル賞級の世界的発明といわれており、中村氏の貢献度を約50%とした。結果、独占の利益の約半分の604億円が中村氏への発明の対価としている。これにより中村氏は残り404億円の追加請求を検討しているとのことである。・・・・

今後、会社は職務発明といえども社員に大きな対価を求められる方向であり、積極的な対応が必要となりそうである。プロジェクト内での発明者の認定方法、貢献度の評価、評価に応じた報奨金の支払、訴訟準備金の積み立てなどが考えられる。・・・
個人のアイデアが会社の競争力を左右する時代に入り、この辺の取り組みが、優秀な人材の確保につながり、ナンバーワンを目指せる企業体質を構成する大きな柱になるといえる。・・・
経済の国際化のなかで、優秀な人材の流出を防ぐためにも、企業の知的財産権に対する意識改革が重要になってきている。

 (注④) Tea-On!の記事
判決文にはこの市場シェアについて次のような理由が示されている。「青色LED及びLDの市場は,被告会社のほか豊田合成及びクリー社により占められた寡占的な市場であり,証拠上,これら三社の間に,製品自体の競争力のほかにその売上高を大きく左右する事情(例えば企業規模や販売力の顕著な差等)が存在するとは認められない。上記の諸事情を考慮すれば,仮に被告会社(日亜化学工業)が本件特許(404特許)発明の実施を競業会社である豊田合成及びクリー社に許諾していれば,(中略)売上高(1兆2086億円)のうち少なくとも二分の一に当たる製品は,豊田合成及びクリー社により販売されていたものと認められる・・・・

一方,推定の実施料率に関しては,東京地裁は「20%」という値を採用した。その理由はこうだ。「被告会社(日亜化学工業)が,競合会社である豊田合成及びクリー社に対して,輝度のまさった高輝度青色LED及びLDを製造し続け,市場における優位性を保っているのは,本件特許(404特許)発明を独占していることによるものであり,さらに(中略)諸事情をも合わせて考慮すると,仮に豊田合成及びクリー社に本件特許(404特許)発明の実施を許諾(ライセンス供与)する場合の実施料率は,少なく見積もっても,販売額(売上高)の二〇%を下回るものではないと認められる・・・

東京地裁が出した原告の貢献度は「50%」。判決文は次のように説明する。「本件は,当該分野における先行研究に基づいて高度な技術情報を蓄積し,人的にも物的にも豊富な陣容の研究部門を備えた大企業において,他の技術者の高度な知見ないし実験能力に基づく指導や援助に支えられて発明をしたような事例とは全く異なり,小企業の貧弱な研究環境の下で,従業員発明者が個人的能力と独創的な発想により,競合会社をはじめとする世界中の研究機関に先んじて,産業界待望の世界的発明をなしとげたという,職務発明としては全く希有な事例である。このような本件の特殊事情にかんがみれば,本件特許発明について,発明者である原告の貢献度は,少なくとも五〇%を下回らないというべきである」。

≪関連サイトの案内≫
     (注①) 中村修二氏の紹介文

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8

 (注②、注③)中村修二氏の判決(All About より)

http://allabout.co.jp/gm/gc/292505/

(注④) Tea-On!の記事
http://techon.nikkeibp.co.jp/NEWS/nakamura/mono200406_1.html

  (注⑤ 、⑥)  日本経済新聞の記事
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG0801T_Y4A500C1EA2000/