2014年5月27日火曜日

大飯原発さし止め訴訟判決と、原発事故の自主避難者への決定。

京都地裁と福井地裁で画期的な決定と、判決が出されました。
どちらの判断も、近年まれにみる名判決として、後世に残る事でしょう。


福井は、大飯原発さし止め訴訟です。

京都は、自主避難者への初の賠償です。

* 京都地裁の決定は、「自主避難者への初の賠償金の仮払いについて」

【福島第1原発事故で福島県内から京都市内へ自主避難し、東京電力に損害賠償を求めて京都地裁へ提訴した40代男性が賠償金の仮払いを申し立てた仮処分の決定で、京都地裁(佐藤明裁判長)が東電に月額40万円の支払いを命じたことが25日、分かった。決定は20日付。東電によると、原発事故賠償で裁判所が避難者への仮払いを命じる仮処分決定を出すのは全国初。】(京都新聞 2014/5/26 08:26)
 

決定では、「男性の休業損害は事故と因果関係がある」と認定し、
「自主避難の損害と事故の因果関係は事案ごとに判断すべき」と、明確に、東電に賠償責任があることを認めました。

その上で、「事故が原因で精神疾患になったとする男性の主張を認め、男性と子育て中の30代の妻は無職無収入で就労が難しいことから今年5月から1年間、月額40万円を支払う必要性を認め」ました。

* 福井地裁は、「大飯原発さし止め訴訟」。

【安全性が保証されないまま関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)を再稼働させたとして、福井県などの住民189人が関電に運転差し止めを求めた訴訟の判決言い渡しが21日、福井地裁であり、樋口英明裁判長は関電側に運転差し止めを命じた】(福井新聞 2014/5/23 15:15)


以下は、その判決要旨です。(福井新聞による :注①)
論点が多いので、投稿者で、短くまとめてみました。

① 避難地域の設定を、「250キロは緊急時に想定された数字だが過大と判断できない」

② 「原発の稼働は法的には電気を生み出す一手段である経済活動の自由に属し、憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべき」である。

そして、原発事故は、「根源的な権利が極めて広範に奪われる事態を招く可能性があ(り)・・具体的危険性が万が一でもあれば、差し止めが認められるのは当然」である。

③「地震が起きた場合、止める、冷やす、閉じ込めるという三つの要請がそろって初めて原発の安全性が保たれる。福島原発事故では冷やすことができず放射性物質が外部に放出された。

地震の際の冷やす機能と閉じ込める構造に欠陥がある。・・・わが国の地震学会は大規模な地震の発生を一度も予知できていない。頼るべき過去のデータは限られ、大飯原発に1260ガルを超える地震が来ないとの科学的な根拠に基づく想定は本来的に不可能」である。

④ また、「対応策を取るには、どんな事態が起きているか把握することが前提だが、その把握は困難だ。福島原発事故でも地震がどんな損傷をもたらしたかの確定には至っていない。現場に立ち入ることができず、原因は確定できない可能性が高い」

⑤ 「被告は原発稼働が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張する」が、「多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いという問題を並べて論じるような議論・・・(は)・・・法的には許されない・・・

原発停止で多額の貿易赤字が出るとしても、豊かな国土に国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の損失」である。


* 京都地裁の決定に関する感想

京都地裁が自主避難者についても、「それなり」の損害を認めたことは、(普通に考えれば)当然のことです。もし、原発事故がなければ、そのままの生活を送る事が出来ていた、訳ですから。


東電が自主避難者に出した損害賠償金は、「スズメの涙」ほどの金額であり、とても賠償金と言えるようなものではありませんでした。

記事が伝えるように、これが、嚆矢(こうし)となって、現在多くの苦難の中で生活を余儀なくされておられる、自主避難者の方々の生活が、少しでも楽になること、を願わずにはいられません。


東電は、この決定を受け入れ、一日も早い対応を取るべき、であろう。


 福井地裁の判決の感想


福井地裁の判決は、原発の再稼働は多数の生存権を脅かすので許されない、とし、
経済性を優先して再稼働をすることは認められない、としました。

再稼働を認めないことの理由についても、多くの点を挙げ、明確に、論理を展開しています。


何度も言いますが、名判決です。

この判決が、今後の判例となってほしいと思います。

* まとめ
今日の社会状況や政府の動向を考えると、このような決定や判決を出すことは、よほど勇気のいる事であった、と思います。

このような判決が珍しい事は、改めて今の日本が危機的状況にあること、の証明でしょう。
「特定秘密保持法」制定の下では、決して、このような判決や命令をだすことは、出来なかったでしょう。

改めて、両裁判官に敬意を表します。


かって、「東電の裁判において」、ゴルフ場の言い分に対して、裁判所は「無主物」という言い訳を認めたことがありました。


考えられないような理由で、東電の主張が、認められました。


そのことを思えば、画期的なことである、と称賛されるのは当然です。


≪関連サイト≫
京都新聞の記事
http://kyoto-np.co.jp/top/article/20140526000017

福井新聞の記事
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/npp_restart/50555.html

注① 判決の要旨についての記事
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/nuclearpower/50559.html