2014年5月8日木曜日

児島 襄著『日中戦争』VOL2=満州事変から盧溝橋事件前まで 

児島 襄著の 『日中戦争VOL2』を読み終わりました。
1928(昭和3)年に関東軍が、張作霖を謀殺。3年後の1931年9月に、満州事変を起こして、満州に進出。ここまでが、第1巻の内容です。


その後の1937(昭和12)年、盧溝橋事件までは、6年の間があります。

そして、第三巻が、その盧溝橋事件から始まります。
ですから、この第2巻は、大きな作戦や事件がありません。

目次をみても、これまであまり目にする事がなかった文字が並んでいます。

記憶にあるのは、「上海事件」と「西安事件」ぐらいです。
だから、読み始める前は、なんとなく気乗りしない感じでいました。

いわば、「中だるみ」のような感があったのです。
しかし、読み進めるうちに、この「中だるみ」感は、吹き飛びました。

そして、だんだんと、この間に記述されている事こそが、日中戦争の重要な位置を占めることが、解ってきたのです。

読み進めるうちに「だるさ」も、「眠たさ」も吹き飛びました。

満州事変で、事を起こしたものの、「満州国」を建てるということは、まだ実現の途中です。
やがて、これは、国際連盟での、「日中間の問題(満州事変)」の討議にまで発展します。

そこで、満州で事を起こした、板垣大佐らは、「この際一つ上海で事を起こし列強の注意をそらし、・・・その間に(満州)独立、までこぎつけたい・・』と考えます。

そして、上海で日本人僧侶が中国人暴徒に殺害されるという事件を起こします。
この事件がきっかけになり、板垣大佐らの思惑どおりに、事が運び、上海は、火の海に包まれることになります。

有名は「肉弾三勇士」は、この戦闘の最中にあった事です。
戦闘は日本軍の勝利で終結を見ますが、勢いに乗った現地の軍隊は、止まりません。

結局、停戦は天皇の意志である、という事で、軍隊も剣を納めます。

その後、大きな戦闘はありません。

しかし、この上海事件の後始末が問題でした。

「蒋介石は日本は国際連盟への反発を強め、危篤の満州国をより一層強化するために熱河省の獲得をめざ(し、その後は)・・・万里の長城をこえて、中国本土への侵入が開始されるこも知れない」と予想した、と児島氏は書いています。

そして、それは現実になります。

日本軍は、その後、熱河省に攻め入ります(1933年2月)。
赤峰、承徳と進み、万里の長城に迫っていきます。

さらに、長城を越え(いわゆる中国本土)、北京に肉薄するところまで、軍隊を進めます。

この辺りの所は、いわゆる一般の学習書においては、軍令部は、現地の部隊の動きに「ズルズル」と引きずられていった、と解説されている所です。

しかし、実際には、参謀本部(東京)は、関東軍(満州の守備隊)が制定した線よりも、南に下った線を進出地に設定していました。

児島氏は、(蒋介石ら、中国側の首脳の見方として)「日本政府は軍に対する統制力を失っている、そして、軍は中国を支配したがっている、・・」と書いていますが、彼らの観察は、的を射たものであった、と思います。

そして、肝心の日本政府自体が、内部統制力を失っていた、ともみるべきでしょう。

このあたり(この本の100ページ目)からは、一気に読み進めました。
そして、「関内作戦」の章のはじめには、「この章は、じっくりと検討する事」と書いた付箋を貼り付けています。

「関内」と言うのは、万里の長城より南の北京を中心とする地域です。

また、今回から、黒鉛筆で、重要な個所を、「かぎカッコ」でくくり、チェックを入れることにしました。
重要な部分が、2,3ぺージと続くので、付箋ばかりになることを防ぐためです。

やがて、一連の戦闘を停止するための、停戦協定(1933年5月)が塘沽(タンクー)で開かれます。
しかし、停戦協定の結果が、「新たな火種」を産みました。

ドイツの軍事顧問(中国軍)のファンケンハウゼンは、言います。

『戦争の気配は一段と濃くなり、英米両国特に英国の関心と視線はヨーロッパに集中している。もし、ヨーロッパで戦火が燃え上がれば、英国は中国が日本に攻撃されても介入の余裕はなく…「中国は独力で日本と戦わねばならなくなる』

「今や日中関係は、すでに不回帰点の到達し、随所で限界を超えている・・・・」

「ヨーロッパに第二次世界大戦の火の手が上がって、米英の手がふさがらないうちに、対日戦争にふみきるべき」である、と蒋介石に助言します。

しかし、蒋介石は、「あと1年待とう」と答えます。

一方の日本は。
国内では、1936年に2・26事件が起きます。

その後は、軍部独裁に走ることになります。「対中国開戦」の機運が高まります。
ドイツの軍事顧問(中国軍)のファンケンハウゼンの見通しは、正確であった、といえるでしょう。

やがて、その後、中国は、「西安事件」で国内の統一を図り、対日戦争へと踏み切ります。

上にも書きましたが、後半の部分は、一気に読めました。
あまり生々しい戦闘場面や、残虐な場面も出てこないので、比較的「気楽」に読めました。

次は、第三巻。実は、この間を読んでいる途中で、半分ほど読み進めています。
次の巻は、600ページをこえる分量があるのですが、あと2,3日で終われそうです。

蛇足ながら、この本は製本が「糸綴じ」になっているので、安心して開くことが出来る、のもいい所です。中央から割れて、ばらばらになるような心配をせずに済みます。

普及版などで、急いで出版したいものなどは仕方ないとして、分量のある本は、「糸綴じ」を復活させて欲しいものです。

この本を読みながら、改めて、「糸綴じ」の良さを実感しました。

(2014年5月8日)