「PKO」は、必要か。
この議論が、抜けている。
日本が、国際貢献をする道は、
自衛隊が、海外に出ていくこと
ではない。
もっと、ほかに、多くの道がある。
「米軍と一体化して武力行使をすること」を否定する国民は、おおい。
だが、その人びとも、日本の「自衛隊が国際貢献をすべきだ」、という事に
ついて、反対する人は、そう「多くはない」のではないか、と思う。
あるいは、正面切って、自衛隊が「国際貢献をすべきではない」とは、
「言いづらい」というのが、正直なところではないか。
1) 「世界の平和秩序維持のための活動」とは、何か
現在行われている「PKO」活動は、1992年6月22日に成立した、
「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」
(いわゆる「PKO法」)に、その根拠がある。
もちろん、それは、「湾岸戦争」がキッカケであった。
この法律について、社会党の土井たか子氏は、
「自衛隊の海外出動ありき、の法案」だ、と述べ反対をした。
自民党の後藤田正晴氏でさえ、
「この法案は、ガラス細工のようなもので、危ない」と、危惧を表明していた。
さて、この法律にまつわる、興味ある「レポート」があることを知った。
それは、自民党の「国際社会の日本の役割に関する特別調査会」に提出されたレポートである。
そのなかの「世界の平和秩序維持のための活動」より、引用する。
「自衛隊も含めた積極的な参加のための立法を準備(する)・・
国連平和維持軍への参加の実績を積み上げ、国連の安全保障システムの強化に寄与(する)・・・
このシステムに、より積極的な関与をするため、国連の安全保障理事会の常任理事国の立場を確保すること。・・・
(以上のことを踏まえて)次の段階としては、将来、国連の権威の下における多国籍軍や国連軍に対して、積極的な協力、さらには参加を検討する必要がある。
多国籍軍や国連軍への参加は、武力行使を前提としているが、現在の日本政府の日本国憲法第9条の解釈では、個別自衛権以外の武力行使、つまり、集団的自衛権に基づく、武力の行使は認められていない。・・・・・」ところで、このレポートを作成した人物が、誰あろう、船田元(はじめ)氏
である。
2) 「PKO」の目的は、常任理事国入り、多国籍軍や国連軍に参加すること
ここには、「PKO法」の目的、「その先にあるもの」が何か、という事も、はっきりと書かれている。
それは、国連の常任理事国に入ること、多国籍軍や国連軍に参加すること、
である。
これまでの「PKO」への参加は、この「理念」のもとに行われた。
そして、現在も、実施されている。
(表向きの理由はどうであれ)そういう事ではないか。
また、これを読むと、今国会に出されている安保法案が、「違憲である」ということの「根拠」も、読み取ることが出来る。
これこそが、1991年ごろの(PKO法」成立前)政府の、集団的自衛権についての考え方であった。
さて、「PKO法」案は、1992年6月15日に、可決成立した。
6月22日、自民党の石原健太郎参議院は、以下のように述べて、
自民党を離脱した。
「平和目的とはいえ、いったん自衛隊を海外に派遣すると、今度は平和維持軍だ、多国籍軍だ、とエスカレートしていくことが、心配だ。環境保護や教育面での国際貢献を考えた方がいい。
私が、考える国際貢献と、自民党が考える国際貢献との間には、基本的な考えで隔たりが大きい。自分の理念を国政に反映するために、今後は、無所属として活動していく。
自衛隊派遣は、バックに戦車や大砲、戦闘機を背負っている。軍事化が背景にあるような国際貢献よりは、数十年にわたって築いてきた平和的な方法を取るべきだ。」
石原氏は、「PKO法」の持つ危険性を、見事に「言い当てて」いる。
また、ここに語られていることは、上で検討を加えた「レポート」の内容と、
そっくりである。
そして、まさに、今日の状況は、石原氏が心配をした通りに、なってきている。
3) 米軍と一体になって、「戦争」に参加することは、絶対に避けるべき
米国は、イラク戦争、シリアへの空爆など、国連の承認なしに、始めた。
米国は、国連を無視し、世界の反対を押切り、「米国の国益」を理由に、
戦争に踏み切った。
今、この安保法案を通すことは、その米国と一体になって、「戦争」に
参加することだ。
いまのところ、自衛隊が、海外で、「現地の住民」に銃を向けたことはない、
とされる。
自衛隊員に「殺傷された」、現地の住民もいない。
だが、自衛隊が、海外で活動するための恒久法が出来れば、
そうはいかなくなるだろう。
自衛隊員に「殺傷され」る、現地の住民が出てこない保証は、どこにもない。
もし、万が一、そのようなことが起きれば、今度は日本の国民が、
標的にされる危険性が出てくる。
だから、安保法案を通して、米国(米軍)と一体になって、「戦争」に参加する
ようなことは、絶対に避けるべきだ。
また、同時に、「国際貢献」の名のもと、自衛隊を海外に出すことは、
この辺で「再考」すべきである。
石原氏が、述べているように、「自衛隊を出すこと以外」の道で、貢献することだ。
そのことにこそ、「知恵」を絞るべきだ。
(参考文献『海を渡る自衛隊』 佐々木芳隆 著 岩波新書)
(2015年7月8日)
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