2015年7月31日金曜日

安保法案の「危うさ」は、歯止めにならない「三要件」にある

2014年6月の新聞記事
参議院の審議が、始まったところである。
ところが、最初から、安倍政権が、躓(つまず)いている。

安保法案の「危うさ」は、歯止めにならない「三要件」にある、という事が明らかになりつつある。


審議が明日から始まる、というのに、政権内から、「法的安定性は関係がない」の発言が、飛び出した。

もとより、安保法制案が、「法的根拠を欠く」のは、「三要件」にある。
安倍首相は、「制限なし」の、集団的自衛権の行使の容認が、「本音」であった、と思う。

それでは、公明党との合意が出来ない。

それで、「譲歩」して、公明党が言い出した「三要件」を入れることにした。
公明党抜きでは、この法案を成立させる事が、出来ないからだ。

「心のなか」では、いまでも、「制限なし」の集団的自衛権の行使をしたい。
このことがあるから、「ちぐはぐ」な答弁になる。
そういうことでは、ないか。


◆ 始まりは、「法的安定性は、関係がない」という発言から

始まりは、磯崎首相補佐官の(安保法案の)「法的安定性は、関係がない」という発言だ。
講演会という公の場で、行われた発言である。

次は、中谷大臣。
大臣の答弁には、従来の自身の答弁との間には、に、「齟齬(そご)がある、として民主党の委員が追及。

これにより審議が紛糾。休憩時間までには、30分も時間があったが、お昼の「休憩」にはいった。
異例のことだ。

しかも、参議院のおける最初の審議であり、安倍首相が答弁に立つということで、NHKが、連日中継をする中においての、出来事である。

なぜ、このようなことになるのか。
その原因は、公明党にある。

正確には、公明党が集団的自衛権の行使の容認を、従来の「出来ない」としていた見解を、「出来る」と180度転換させた、ことによる。

このことについては、このブログにおいても、何度か指摘をした事がある。
重複するが、一部分を、ここに転載しておきたい。


◆ 混迷の原因は、公明党が「従来の見解」を否定したことにある

多事叢論:自民、公明両党、集団的自衛権の行使の容認を、大筋合意 

「公明党は、「安倍政権から離脱をしない」と言うのが、当初からの党首脳部の決定であるのだから、当然のコースと言える。
 あとは、世間をどう「欺くか」だけの話であった。
高村自民党副総裁が、公明党への提示内容を二転、三転させたのは、そのためであった、と観る事が出来よう。
 高村自民党副総裁や安倍首相にとっては、公明党への提示内容への提示内容は、「どうでもいいもの」であった。
要は、与党協議の結果の合意、と言う形にしたかった。
ただそれだけの事であろう。」(2014年6月25日の記事)
多事叢論:公明党の山口代表が、集団的自衛権の行使容認を認めた
「 だから、公明党の山口代表が「容認をする」と認める会見を開いたのは、地方組織に説明をしやすくするため、であった。・・・
日本国憲法の何処をどういじってみようと、出てきようもない、『解釈の仕方』は、問題がある。
さらに、それを、改憲をせずに、強引に押し通そう、とすることに問題がある。
『解釈の仕方』を変えたいのなら、日本国憲法の改正が、先である。
まずは、国民に相談してから、決めることである。
それもせずに、安倍政権だけで、もっと言えば、『安倍首相の思い』だけで、日本国憲法に違反することをしようとするから、間違いである、というのだ。
 それもせずに、安倍政権だけで、もっと言えば、『安倍首相の思い』だけで、日本国憲法に違反することをしようとするから、間違いである、というのだ。」(2014年6月26日の記事)
日付を見てもお分かりのように、ちょうど今から、1年前のことだ。
今の国会での「混迷」は、この時から始まった、といってよいと思う。

「出来ないこと」を、「出来る」と、180度転換させた。
そのために、協議に協議を重ねた。

しかし、「出来ないこと」は、どう「言い訳」しようと、「出来ない」のだ。
その、「ほころび」が出てきた。そういうことだ。

当時は、まだ、十分に、安倍内閣の支持率も、高かった。
国民の反対が、ここまで「高まる」とは、予想できなかったことだろう。

国会周辺だけでなく日本の各地で、これほどの規模で、「安保法案の反対デモ」が起きるとは、思わなかったであろう。

当時もそうであったが、いよいよ、公明党内からの、異論が「表面化」してきた。
それは、安倍政権の支持率が、4割をきり、「3割をきるような”いきおい”」であることが、おおきな原因の一つだ。

なにしろ、山口代表氏も、北川副代表も、これまでは、「出来ない」と公言していたのだ。


◆ まるで「歯止め」の役目を果たさない、「三要件」の「危うさ」

それが、国会の審議を経る中において、まるで「歯止め」の役目を果たさない、ことがあきらかにされつつある。

それどころか、安倍政権がこの法案を出すにあったって、「出来ない」としていたことまで、「出来る」と見解を変更している。変更を、「しつつ」ある。

「なし崩し的」に、ズルズルと、「出来る範囲」を拡大しつつある。

それは、ひとつには、審議で答弁に立つのは、安倍首相、中谷大臣、岸田外相である、からだ。
公明党は与党であるが、閣内にいる(公明党に所属の)大臣は、安保法制とは、直接には、関係のない役職にある。

したがって、答弁に立つことがない。
与党協議は終了して、法案が提出され、審議中だ。

もうすでに、「切り札」は、安倍政権の「手の中」にある。
安倍政権の「思うが儘(まま)」だ。

審議の過程においてさえ、「自己否定にも等しい」事を言い出す。
「政権内で、しっかりと検討して、結論を出す」、だから、法案には書き込まない、と言い逃れをする。

「特定秘密保護法」があるのだ。
政権内で、どのような「やり取りがあった」のか、そのことが公表され、国民に知らされるとは、「到底」思えない。

国民の「不信感」の根底には、このことがある、と思う。
それは、とりもなさず、安倍政権にたいする「不信感」の表れだ。

安倍首相の「強引なやり方」に対する、国民からの反対の意思表明である。
今回、NHKは、国会の審議を3日間も連続して、中継をした。

この3日間の国会での審議を観て、安保法制案に対して、いかなる「認識」を持ったことであろうか。


(関連サイト案内)
首相、海外派兵拡大に含み 「法律に規定困難」=東京新聞
不正な武器使用に罰則なし 自衛隊海外派遣で防衛相=東京新聞
海外派兵の拡大に余地 参院特別委 首相「総合的に判断」=東京新聞
新安保法制 礒崎氏発言 法秩序軽視は許されぬ=北海道新聞

 一部訂正、加筆して、再送しました。

(2015年7月1日)