2016年9月22日木曜日

大佛次郎著『天皇の世紀』カ中佐、乱暴な出迎えにも、悪意を抱かず!

大佛次郎『天皇の世紀』 1
さて咸臨丸のオランダ人が鹿児島に上陸したときに、当然に外国船らしい見なれぬ船が入ってきたので、城下の町の者があやしんで、不穏な騒ぎを起こした。藩主が招いたもの
だとは知らなかったのだし、元来、薩摩のお国振りは排他的なのである。異人が上陸して来たと聞いて人が見物に押出したばかりでなく、モッブの心理から、草鞋や石を投げつけ、荒馬を放って道を通れぬようにするような乱暴をするものさえ出た。


武士階級の若い者たちが気負いたって、やったことである。出かけるのが遅れて現場を見なかったカッテンディーケは、あやしむだけで別に悪意があるものと見ていない。藩主に招待された者だから、乱暴の理由を理解できなかったようである。

ウィレム・ヨハン・コルネリス・リデル・ホイセン・ファン・カッテンディーケ

『・・・ある者はここでは鰻が祝儀の魚なのかも知れぬと言った。当局は明らかに我々のことを非常に案じていた。しかし、私はその群衆が何ら悪意を抱いていたものとは信じない。

むしろこれまで一度もヨーロッパ人を見たことのない大衆は、一種の好奇心を持ったのに違いない。しかしその気持が、我々の保護にあたっていた役人たちに心配を起こさせたものだろう。』

鹿児島以外の、よその土地で異人を見て群集心理にしろ民衆がこうした乱暴に出た例はまだない。カッテンディーケが善意に解釈した方が通常なのである。

だが、外のことを知らない日本人の民衆に、誤解と敵意が潜伏熱のように隠れて在ったことは否認し難い事実である。異人を夷敵と見る知識階級の一部とも、民衆は違っていた。(P.430-432)

(2016年9月22日)



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