児島 襄(こじま のぼる)『講和条約ー戦後日米関係の起点ー』 第1巻
米軍も、日本人を恐れていた。
…ほとんどの米国人にとっては、日本と日本人は完全に未知の国、まったくの異人種、異教徒、異文化の民でしかない。
………
日本兵の戦意は日本に近づくにつれて高まるとみえ、比例して米軍の損害もふえ、陸軍参謀総長G・マーシャル元帥は、日本本土作戦の過酷な結果を予測した。
「日本人は天皇が自決するまで戦うだろう。米軍の損害は百万を越え、日本人も二千万人が死ぬであろう」
二千万人は当時の日本本土人口の約4分の1であり、元帥の推量は誇張ではないと見られた。
そのような日本人が、天皇の命令で降伏したとはいえ、戦意を喪失したとは思えない。
むしろ、最後まで戦わせられなかった欲求不満のために、米兵に襲いかかるのではないか。
航空隊の報告では、日本の主要都市は焼け野原だという。瓦礫と弾孔に富む焦土は、襲撃の適地でもある。
進駐について、米兵に与えられた「大平洋戦争の手引き」には、日本占領後「一年間」はゲリラ戦を予期せよ、と書かれ、とくに日本人には女子供でも単独で面接するな、と特記されていた。
日本人は「一人一殺主義」、「神風特攻精神」を骨髄までたたきこまれている、女性も短刀を身につけている…という。
日本の東半分の占領を担当する第 8軍司令官R・アイケルバーガー中将も示達した。
「第8軍占領地区には、少なくとも56万人の日本兵の存在が推定される。狂信的で強力な右翼組織も存在する…各部隊はつねに戦闘態勢を維持し、任務地に進出するさいは敵の武装解除を確認すべきである」
総司令官D・マッカーサー元帥も、進駐前夜は不安で眠れず、スボンのポケットに拳銃を入れて、日本に向かった。
片や「狼男」、方や「鬼畜」という日米双方の理解は、しかし、たちまち一変した。(P・9-10)
(2016年9月22日)
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