2016年10月4日火曜日

「縄文時代的」食事と、過熱する買い出し生活

<大佛次郎『天皇の世紀』 1>
失業者が増えた。
生活苦のためだけではない。

当時の6大都市の工場労働者の平均賃金銀は男子月額166円、女子81円。


離職してかつぎ屋になり、一貫 8円の甘藷を東京で15円で売れば、7円の稼ぎになる。毎回5貫メを運んで35円。それを月10回やれば月額350円の儲けである。

電車賃や経費を差し引いても月200円以上の収入は固く、工場で働くよりはるかに有利になる・・・・。

買い出しは、だから、「食うために買い出し」に「売りための買い出し」が加わることになり、各駅に混雑はますます激化され、物資のヤミ値も高騰するばかりであった。

占領軍も、インフレを促進した。
米軍は、日本で使用するための「B型円表示補助軍表」、いわゆるB円軍票を用意していた。

いや、すでに敗戦前、米軍将兵には1ドル対10円の比率で給料3億円が軍票で支払われ、うち9503万円が、6月8日から8月15日までに沖縄で使用済みであった。

マニラでの降伏文書の打ち合わせの際、米軍側は、6億8200万円の軍票の準備がある旨を日本側につたえた。

インフレが予期できる戦後日本で大量の軍票が使用されては、ますます通貨は高騰してしまう。



「軍票を使用すれば国内の財政金融を攪乱し・・・連合軍の要求条件実施に致命的影響を及ぼし、ひいては、『ポツダム』宣言履行に支障きたす・・・」(原文はカナまじり)と、日本側は米軍側に訴え、交渉の結果、次の条件で軍票使用を中止させた。

① 軍票の代わりに日本円を支給する。日本銀行に占領軍名義の円勘定を設け、
必要な資金は日本政府が払い込む。

② 米軍保有の軍票は、等価で日本円と交換する。

③ 米軍が本国に送金する場合の交換比率は1ドル=15B円とする。(注、戦前の為替レートは1ドル=約4円)

この措置は、占領軍の負担でもあり、インフレ激化の要因になった。

米軍が要求する物資、施設、労力の調達要求に応ずることは、その費用分の日銀券増発を必要とするからである。

米兵が儲けることにもなった。

1ドル=15円のレートなので、日本の美術、骨董品などを割安で買える。第8軍司令官アイケルバーガー中将も、御木本真珠店から見事な大粒真珠のネックレスを夫人用に650円で(43ドル)で買って、喜んだ。
「ニューヨークでなら1000ドルの品だ・・・」

・・・・

軍票の組織的な横流しがはじまり、米兵の財布はふくらみ、それにつれて慰安婦の値段が上がり、闇値も釣りあがっていった。

(主食補助のため、”未使用資源”の活用が通達された)

「甘藷茎葉(イモのつる)、桑残葉、雑海藻、大根葉、蜜柑皮、団栗、澱粉粕、よもぎ、ぶどう糖、南瓜種子、さなぎ、
茶屑等々」(p、21-22)

(2016年10月4日)

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