2016年10月7日金曜日

ポツダム宣言第8項:日本の主権は本州、北海道、九州及四国並びに吾らの決定する諸小島に局限する

<児島 襄『講和条約』第1巻>
外務省条約局第2課は、「平和条約締結の方式及締結時期に関する考察」の覚書をまとめた。
その際「ベルサイユ講和条約」の主題に注目したーー


① 戦後世界の平和機構(国際連盟)の成立
② 戦争犯罪人の処罰
③ 領土
④ 賠償

だが、これらのうち、①は現に誕生しつつあり、対日講和条約に規定する必要はない。

平和維持の点からは、日本に投下された新兵器「原子爆弾」の管理が重大事であるが、それは当然に国際的に処理される問題なので、これまた対日講和条約とは無関係になろう。

②は、既に日本が受諾したポツダム宣言にふくまれている。別に、「平和条約の規定を待つ」までのことはない。

③に関しては、同じくポツダム宣言第8項がある。

「日本の主権は本州、北海道、九州及四国並びに我らの決定する諸小島に局限する」(原文はカナまじり)

ポツダム宣言を発表するトルーマン

第一次世界大戦のさいは、領土問題について民族自決を基調にする米大統領w・ウィルソンの「14か条」宣言があったが、内容は抽象的であった。

ヨーロッパの複雑な「地理的民族的様相」に対応して領土問題を解決するには、講和条約できていせねばならなかった。

今回の場合は、「カイロ宣言」およびポツダム宣言で日本の領土問題も、「処理」されているとみなされるので、この面からも対日講和条約を急ぐ理由は、連合国側にないとみこまれる。

④の賠償問題も、前大戦のときは、フランスの経済的被害が大きく、同国は戦後復興のための賠償金取り立てを不可欠として、平和条約で規定することを主張した。

しかし、「今次大戦」では、「賠償を取るために、汲々としている」国家は、特にフランスのような「実力大なる国家」は、見当たらない。

日本の経済力は破壊され、賠償させようにも「多くを期待」出来ない実情も、存在する。

ゆえに、ここにも講和条約を緊急としない事情がうかがえる・・・。

だが、第2課は、それでも対日講和条約は「必須かつ必至」、判定した。

戦争が国際関係である以上は、この開始が外交の断絶と宣戦という国際法上の手続きを必要とするように、終結もまた実体的なものでだけではなく、法的処置がとられねばならないからである。

日本は、敗戦によって他国に併合されたのでもなく、国家が分割されたのでもなく、いずれは交戦国との間にも平和関係が設定されることになる。

平和関係の回復は、すなわち講和条約の締結によらねばならない。

連合国側は、すでに枢軸国にたいする講和条約の起草を公約している。日本だけが除外されりゆうは、ない。

さらに連合国側が対日講和条約を必要とする根拠も推断できる。

「連合国は対日戦争の果実を分配する必要があるので、この分配は帝国と連合国との国際約束によって、行われるべきである」(原文はカナまじり)

勝利の「果実」に対象は土地、権益、債券その他多肢にわたる。(P・31-32)

(2016年10月7日)

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